(3)宮城県に被害を及ぼす地震及び地震活動の特徴

宮城県に被害を及ぼす地震は、主に太平洋側沖合で発生する地震、陸域の浅い地震である。なお、宮城県とその周辺で発生した主な被害地震は、図4−45のとおりである。

 青森県から宮城県にかけての太平洋側沖合では、1896年の明治三陸地震(M8 1/2)や1933年の三陸地震(M8.1)、1968年の十勝沖地震(M7.9)のようにM8程度の巨大地震が発生することがある。2回の三陸地震は陸地から離れた日本海溝付近で発生したため、地震動による被害は小さかったが、津波により太平洋側沿岸部に大きな被害が生じた。被害が大きかった原因は、津波そのものの規模も大きかった上に、県北部沿岸に発達したリアス式海岸のV字型の地形の影響で、湾奥ではさらに津波が高くなったためである。これらの地震より規模の小さい地震でも、1978年の宮城県沖地震(M7.4)のように、震源域が陸に近い場合には、地震動によって大きな被害を及ぼすことがある。1978年の宮城県沖地震の際は、特に丘陵地帯を造成して宅地化した地域を中心に大きな被害が生じ、さらに、ガス、水道、電気などのライフラインの被害により市民生活に混乱が生じるなど、都市型の災害が生じた{48}。この他、歴史の資料によって、いくつか宮城県に被害を及ぼした地震が知られており、古くは三陸沖に発生したと考えられている869年の地震(M8.3)により、多賀城下に津波被害が生じたとの記録がある。また、1978年の宮城県沖地震が発生した場所よりさらに沖合の宮城県沖では、短期間にM6〜7程度の地震が続けていくつか発生することがある{49}

 なお、1978年の宮城県沖地震が発生した海域付近では、1855年(M7 1/4) 、1897年(M7.4)、1936年(M7.5)と、ほぼ40年間隔で同程度の規模の地震が発生してきた{50}。1936年の地震は、その震源、規模ともに1978年の地震とほぼ同じであり、仙台市などで震度5が観測された。しかし、被害に関しては、1978年の地震に比べて、はるかに軽微なものであった。これは、都市化、宅地化の進展など、社会状況の変化によって被害状況が変わってくることを示している。なお、1936年の地震による津波の波源域は、1978年の地震の震源域の南側に推定されている{51}

 宮城県の地形を見ると、県内には仙台平野が大きく広がり、山形県との県境沿いには奥羽山脈が南北に延びている。県内の主要な活断層は、仙台平野の南部の仙台市付近には長町−利府線断層帯が北東−南西方向に延び、県南部から福島県にかけての奥羽山脈の東麓には福島盆地西縁断層帯がほぼ南北方向に延びている。ともに活動度B級の逆断層である。図4−46は、宮城県の地形と主要な活断層を示したものである。

 陸域で発生した被害地震としては、歴史の資料によると1646年(M6.5〜6.7)、1736年の地震(M6)により、仙台城下に被害が生じたと記録されているが、長町−利府線断層帯との関係は不明である。明治以降では、1956年の白石の地震(M6.0)、1900年(M7.0)と1962年(M6.5:宮城県北部地震)に宮城県北部で発生した地震が知られている。

 1956年の白石の地震は福島盆地西縁断層帯付近で発生したが、この断層帯の活動との関係は分かっていない。もしこの断層帯で発生した地震だとしても、地震の規模の大きさからは、断層帯全体を震源域としたとは考えにくい。また、宮城県北部で発生した1900年(M7.0)と1962年(M6.5:宮城県北部地震)の地震では、宮城県北部を中心に震度5から6相当の強い地震動が生じ、被害が生じたが、この二つの地震に対応する活断層は見つかっていない。

 宮城・岩手・秋田県境の栗駒山周辺は東北地方の中で群発地震活動が比較的活発な地域の一つであり、例えば1950年(最大M4.3)の活動など、過去M4程度の群発地震が数多く発生してきた。群発地震活動の期間は、過去の例によると1ヶ月以内で収まる場合が多く、長くても4ヶ月程度である。この地域では、本震−余震型の地震が発生することもある。栗駒山近くの鳴子町鬼首付近を震源域とする1996年の秋田・宮城県境の地震活動では、逆断層型の地震(M5.9)と横ずれ断層型の地震(M5.7)が続けて発生した。複雑な発生過程の地震活動であったが、大きく見ると本震−余震型の経過をたどった{52}。また、1962年の宮城県北部地震(M6.5)が発生した地域周辺では、M6以上の本震−余震型の地震が発生するほかに、例えば1985年(最大M4.3)のような群発地震がときどき発生することがある。さらに、蔵王山付近でも群発地震が知られている。蔵王山や栗駒山は火山であるが、これらの火山と群発地震活動との関係について、はっきりしたことはまだ分かっていない。

 また、周辺地域で発生する地震や北海道から関東地方にかけての太平洋側沖合で発生する地震によっても被害を受けることがある。さらに、1960年のチリ地震津波のような外国の地震によっても津波被害を受けることがある。チリ地震津波の際は、三陸沖などの日本近海で発生する地震による津波と違って、湾口が狭く湾奥が広いような湾の方が、湾奥で津波が大きくなった。

 なお、宮城県とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図4−47に示す。

表4−3 宮城県に被害を及ぼした主な地震