(1)太平洋側沖合などのプレート境界付近で発生する地震

太平洋プレートは、北海道地方の太平洋側沖合にある千島海溝と日本海溝から、北海道地方の下に沈み込んでいる(図3−2)。

 太平洋側沖合などのプレート境界付近で発生する地震は、沈み込む太平洋プレートと陸側のプレートがその境界でずれ動くことにより発生するプレート間地震と、沈み込む太平洋プレートの内部で発生する地震に分けられる。

1)太平洋プレートの沈み込みによるプレート間地震

 太平洋プレートの沈み込みによるプレート間地震としては、千島海溝などに沿って発生する巨大地震があり、北海道地方のうち太平洋側の地域に地震動による被害をもたらすとともに、地震によって発生した津波が太平洋沿岸に押し寄せることがある。

 その例としては、19世紀には、1843年の釧路沖の地震(M7.5)、1856年の青森県東方沖の地震(M7.5)、1894年の根室沖の地震(M7.9)などが発生している。その後、1952年の十勝沖地震(M8.2)、青森県東方沖で発生した1968年の十勝沖地震(M7.9)、1973年の根室半島沖地震(M7.4)などが、比較的短期間のうちに、それぞれの震源域が重ならない領域で発生した。太平洋沖合の千島海溝沿いの海域では、このような一連の大地震が、数十年から百年程度の間隔で繰り返していると考えられている。

 これは次のように説明されている。まず、太平洋プレートの沈み込みにより、千島海溝などに沿った地域で数十年から百年程度かけて歪が蓄積する。千島海溝に面した北海道東部の地域は、北西−南東方向に縮むとともに、沿岸部が定常的に沈降する地殻変動が見られており、この歪の蓄積に関係していると考えられている(図3−4図3−5)。このような歪の蓄積が限界に近づいたとき、プレート間地震が次々と起こり、歪が解放されていく。このため、海溝に沿って、比較的短期間のうちに震源域が重ならないように一連の大地震が発生する。一連のプレート間地震が終了した後は、再び歪が十分に蓄積するまで、大地震は起きなくなるが、このような繰り返しは、今後も続くと考えられている。ただし、この地域では、1994年の北海道東方沖地震(M8.1)のように、沈み込む太平洋プレート内で巨大地震が発生することもあり、一連の大地震と次の一連の大地震との間隔だけをたよりに、大地震の発生を予測することは難しい。

 なお、通常の地震より断層がゆっくり動き、人が感じる揺れの大きさに比べて、津波の規模が大きくなる、いわゆる津波地震が起きることもある。1975年の北海道東方沖の地震は、地震動から求めたMは、7.0であったが、断層運動の規模をおおむね表すと考えられる津波の規模からMを推定すると、7.5以上であった{6}

2)沈み込む太平洋プレート内の地震

 北海道地方の下に沈み込む太平洋プレートの内部では、規模の大きな地震が発生している。1993年の釧路沖地震(M7.8)はやや深いところ(深さ約100km)でほぼ水平な断層の断層運動により発生し、また1994年の北海道東方沖地震(M8.1)はそれより浅いところ(深さ約20km)で傾斜角の大きな逆断層型の断層運動により発生した。さらに、1978年に国後水道の直下、約150kmの深さで、太平洋プレート内部の地震(M7.7)が発生している。なお、北海道地方に隣接する地域では、海溝付近のごく浅いところ(深さ約20km)、すなわち沈み込みはじめようとしている太平洋プレート内で1933年に正断層型の三陸地震(M8.1)が発生した(詳細は、4−2(1)参照)。この地震は大津波を伴い、北海道の太平洋沿岸でも被害が生じた。