4−2 データ解析

横軸に各発震点からの距離、縦軸に初動読み取り値をプロットしたものを図4−2−1に示す。ここでプロットした初動読み取り値は、発震記録から読み取った値そのものではなく、測線の両端の受振点であるRP1とRP612を直線で結ぶ仮想測線に投影し、RP1を距離の原点として、距離・走時を補正した値になっている。表4−2−1には屈折初動読み取り結果(発震記録から読み取ったオリジナルの走時及び仮想測線投影後の補正値)を示す。

図4−2−1の走時曲線では、はぎとり法によって得られた各層の屈折波の見かけ速度も示してある。堆積層中を通る初動の見かけ速度として、測線全体にわたって1.8km/sec前後の走時が観測されている。さらにその下の層からの走時として、5.6km/sec程度の屈折波が観測されている。また反射法の発震点VP122の走時からは3〜4km/sec程度の屈折初動が観測されているが、屈折発震記録からは見られない。

速度構造モデルの推定では、まず同じ屈折面からの屈折走時の見かけ速度及びインターセプト時間を読み取り、発震点直下の屈折面の速度及び深度を計算した。同時に反射法による深度断面図及び速度解析の結果等を参考にしながら、基盤の形状や速度構造を推定し、大局的な速度構造を求めた。その後、岩崎(1988)による波線追跡プログラムを用いてレイトレーシングを行い、試行錯誤的に速度構造モデルを微調整しながら理論走時と実際の初動走時を合わせ、最終的な速度構造モデルを求めた。

図4−2−2には最終的な速度構造モデルを、図4−2−3には各発震点における屈折波の理論走時と観測走時との比較を示す。また図4−2−4−1図4−2−4−2図4−2−4−3図4−2−4−4には発震記録上に初動読み取り値と構造モデルによる理論走時を重ね合わせたものを示す。速度構造は表層800m/secの下に堆積層1,800m/sec、基盤層5,600m/secの2層が存在するモデルである。また基盤までの深度は、測線北端で約300m、中央部の窪みの最深部で約490m、測線南端で約400mとなっている。図4−2−3では理論走時と観測走時とで若干の違いが見られるものの、基本的にはこの2層構造モデルで観測走時を説明できることがわかる。

一方、図4−2−1で示した走時曲線では、一部の反射記録で3〜4km/sec程度の屈折初動が観測されていることから、基盤層の上に中間層として3,500m/sec層をおいた3層モデルも検討した。これは測線東側の「仙台Br」のPS結果でP波速度3,500m/secの層が確認されていることを考慮して行ったものである。図4−2−5には3層の場合の速度構造モデルを、図4−2−6には3層モデルに対する屈折波の理論走時と観測走時との比較を示す。3層モデルの場合、基盤までの深度は、測線北端で約300m、中央部の窪みの最深部で約560m、測線南端で約400mとなり、2層モデルに比べ、中央部が約70m深くなっている。中間層とした3,500m/sec層からの屈折波は基盤からの屈折波の後続波となっているため今回の発震記録では確認できないが、3層モデルでも観測走時を説明することが可能である。