2−1−2 地質構造

調査地域周辺の新第三系は全体には5゜前後の緩い東傾斜を示し、東に向かってより新しい地層が露出している。しかし、長町−利府線(長町−利府断層)に代表される逆断層、鈎取−奥武士線などの単斜構造、並びに褶曲構造などによって複雑な構造を呈している(図2−1−10;北村ほか,1986)。

長町−利府線は、宮城郡利府町から名取川付近にかけて北東−南西に延びており、その地下深部構造を検討する資料として、反射法地震探査断面(宮城県,1996;池田ほか,2002)などがある。これらの断面では、仙台市街地で知られている地層の層序、岩相、構造、層厚などの地質情報を考慮して地質解釈がなされている。

池田ほか(2002)では、下位より基盤岩類、高館層+槻木層、旗立層+茂庭層、綱木層、仙台層群、及び第四系の分布状況が示されている(図2−1−11)。池田ほか(2002)によると、深度500m付近までは不明瞭ながらも北西に35〜45゜傾斜する逆断層(長町−利府断層)が認められるが、それ以浅の地層は南東に20゜程度の傾斜で撓曲構造を示している。また、長町−利府断層から派生した明瞭な逆断層(大年寺山断層)は地表まで達しており、ここではこれらによって地形的な高まりが形成されている。

長町−利府断層の地表における新第三系の地質構造は,本断層の活動度が最も高いと考えられる大年寺山の山頂付近の南東側斜面では南東に5〜10゜程度の緩い傾斜を示すが,平野部に向かって急傾斜となり,丘陵南東端では最大40゜程度の傾斜を示す。また、第四系更新統のうち,青葉山層は大年寺山山頂部ではほぼ水平であるが,南東側斜面では地形面とほぼ平行に20゜前後の傾斜を示している(宮城県,1996)。

長町−利府断層を境にして、低下側(東側)では基盤深度が浅く、隆起側(西側)では中新統が厚く分布する。このことから、長町−利府断層は中新世には正断層として活動し、その後、鮮新世以降に逆断層として活動したと判断している。

池田ほか(2002)には、長町−利府断層の東方に、この断層と同系統の伏在断層が示されている。この伏在断層の低下側(東側)では、仙台層群上部層より新しい地層で、隆起側(西側)に比べてその層厚が増している。この伏在断層は、池田ほか(2002)の断層図には、「苦竹伏在断層」として図示されている(図2−1−12)。

鈎取−奥武士線は、太白区鈎取から青葉区愛子間へ北西−南東方向に延び、次いで北東−南西方向に延びており、これに沿って新第三系が東傾斜の単斜構造をなしている。このうち、南部の北西−南東方向の部分が40〜70゜の急傾斜を示す(北村ほか,1986)。

太白区鈎取以南には、樽水背斜東翼部に単斜構造が存在する。樽水背斜の東翼部は下部新第三系が20゜前後の傾斜を示すが、東に向かって急傾斜となり、高館丘陵東縁部では40゜程度の傾斜を示す(北村ほか,1986)。