本調査の目的は、先述したように平成11年度から12年度にかけて実施された横浜市による地下構造調査によって確認された地下段差構造の連続性と活動性に関する地質情報を得ることである。
そのため、地下段差構造が連続すると推定される地域において、No.1、No.2測線の2本の反射法探査測線を設定して探査を実施した。そこで得られた探査結果をもとに、段差構造の連続性や活動性などに関する検討を以下に加える。
(1)地下段差構造の連続性
探査測線における地質構造を明確にして、地下段差構造の連続性を把握するため、深度断面図における反射面を追跡した。
図−18は深度断面図において、任意の明瞭な反射面を追跡して表示した図である。なお、速度解析の結果(巻末付図)より、各探査測線における速度構造の変化は小さく、地層の層厚変化にも乏しいため、反射面の追跡は上下方向を6倍に誇張した断面図で行った。
以下に、各深度断面における反射面の特徴をまとめて示す。
No.1測線:反射面は、深度約1000m以浅において明瞭であり、南から北にかけて緩やかに傾斜する傾向が明らかである。両測線端における反射面の標高差より、平均勾配は約2.2度となる。測線の中央付近には、測線内における全体的な傾斜の傾向とはやや異なる撓み(撓曲)が、CMP700〜1100付近の約1km区間に認められる。ここに見られる撓曲は、平成11〜12年度に実施された地下構造調査(横浜市)における反射法地震探査で確認された地下段差の東方への延長に相当すると推定される。撓曲の変位量は、反射面のCMP700〜1100間における標高差より、下部の地層ほど大きくなる傾向があり、深度900〜1000m付近で約80m、深度500〜600m付近で約50m、深度300m付近で約40mと推定される。
No.2測線:No.1測線と同様に、反射面は深度約900m以浅において明瞭であり、緩やかな起伏を伴いながら南から北にかけて傾斜する傾向が明らかである。しかしながら、反射面の撓みは明瞭でなく、地下段差構造を反映する明確な地層の撓曲は認められない。また、上述した方法で反射面の平均勾配を求めると、約1.7度となり、No.1測線に比べて緩くなる傾向にある。
(2)地下段差構造の活動性
地下段差構造の活動性は、撓曲構造の両端における反射面の相対的な標高差を求めることにより、推定することが可能である。平成13年度の反射法探査測線は測定点の間隔が細かく比較的詳細な構造が得られており、各測線の深度断面をもとに同一反射面と推定される境界面を追跡することが容易である。そこで、ここに見られた地下段差構造の活動性に関する情報を得るため、測線の両端付近における反射面の標高差をもとに、その累積性を求めると図−19のようである(山崎晴雄委員提案)。
なお、追跡した境界面はGL−450m付近の明瞭な反射面(1E、2D面)を基準に相対的な変位量を求めて表示しており、また、反射面の標高差は水平距離が長いほど大きくなるため、図−19では、標高差を算出した区間距離は2kmとして正規化している。
この図に示されるように、撓曲が見られたNo.1測線では、2B面から2D面にかけての地質層準においては、各面の標高差に累積性が認められ、地下段差が成長していたことがうかがえる。しかし、2B面から上位の反射面においては、累積性は認められず、活動はほとんど停止していると推定される。
また、No.2測線においては、上述のように撓曲構造そのものが明らかでなく、図−19に示すように、反射面の相対標高差はNo.1測線に比べて著しく小さく、活動の累積性は明確でない。
図−20は、地下段差構造が認められた平成11、12年度横浜市地下構造調査における反射断面、本年度の調査結果、さらに川崎市地下構造調査による反射断面を示した図である。
図より明らかなように、平成11〜12年度の地下構造調査で検出された地下段差構造は、本調査におけるNo.1測線付近まで連続するが、その東部に位置するNo.2測線との間でほとんど消滅し、これより以東には連続していないと推定される。
(3)地質層準の推定
反射法探査によって得られた深度断面図における地質層準を推定するため、周辺地域における既存の深層ボーリングデータによる対比を以下のように行った。
調査地域の周辺において参考となる既存の深層ボーリングデータは、図−21に示す3本[防災府中、防災横浜、GS川崎]である。既存の文献に記されている地質層序と年代は、図−21に併記するとおりである。
これら3本の深層ボーリングのうち、[防災横浜]と[GS川崎]データをもとに、既存の反射法探査結果[平成7、12年度川崎測線]を介して、本調査で得られた反射法探査断面における地質区分を図−22に示すように推定した。しかし、図中に示すように、[防災横浜]孔における地質層序区分とは約250mの食い違いが生じる。その要因としては、反射法探査解析におけるデータ処理や、深層ボーリングにおける地質層序の設定など、複数の要因が想定されるが、現状のデータにおいてはそれらを特定できる情報は得られていない。しかし、図−21に示した[防災横浜]孔で実施された物理検層結果より推定される地盤物性値(とくに密度値)は、深度1100m付近において変化する傾向が見られることより、本孔における上総層群と三浦層群の境界は、約250m浅く設定される可能性が考えられる。
これらの地質層序の情報と、既存の反射断面をもとに、本調査で得られた反射法深度断面図における地質区分を推定すると、図−23となる。
ただし、上述したように反射法探査における解析精度や、ボーリング調査における地質層序の設定などに若干の問題点は残るが、今後における地質情報の集積による精度の向上が望まれる。