評価手法については、参考文献4)の「長期的な地震発生確率の評価手法について」の手法を用いる。以下に、この手法についてまとめる。
(イ)更新過程
地震発生という現象について、既に発生した地震の時系列データを処理するに当たって、確率過程を取り上げることによって、将来の地震発生時期を確率的な表現で述べることができるようになる。ある地域に起こった一定の大きさ以上の地震の時間的分布を議論するときには、各地震を時間軸上の1点に落とし、いわゆる点過程として取り扱うことができる。いま、地震が起きる時刻をt0、t1、t2、…で表す。この時、地震の発生間隔T1=t1−t0、T2=t2−t1、…がお互いに独立で、同一の分布をするような確率過程を更新過程という。更新過程のうち、特に発生間隔が同一の指数分布に従う場合をポアソン過程という。
更新過程として扱う地震発生間隔の分布モデルとして、ここではBPT分布で表されるものとして検討を行う。
BPT(Brownian Passage Time)分布とは、プレート運動による定常的な応力蓄積過程において、着目する震源域周辺での地震やスローイベントの発生等ブラウン運動として表現される応力場の擾乱が加わる中で、応力蓄積が一定値に達し、断層が活動する(地震が発生する)、という物理的過程(ブラウン緩和振動過程)を踏まえたモデルである。最後に地震が発生してからの経過時間をt、活動間隔(地震発生間隔)の平均をμ、活動間隔のばらつきをαとすると、以下のような確率密度関数となる。

また、最も基本的な更新過程であるポアソン過程は、活動間隔の平均μを用いて以下の式で表される。

(ロ)時間予測モデル
時間予測モデルとは、断層の破壊強度が時間によらず一定というモデルのことをいう。定性的には、大きな地震の後では次の地震までの間隔が長く、小さな地震の後では間隔が短いということになる。このモデルにたった場合、最新の地震発生時のずれの量と長期的な断層のずれ速度とから、最新の活動から次の活動までの期待される経過時間を次のようにして求めることができる。すなわち、最新の活動時のずれの量をUlastとし、長期的な断層のずれ速度をVとすると、その期待される経過時間Tt.p.は次式で求められる。

上式から、物理的な制約によって、モデルの確率密度関数のパラメータのうちの一つが固定されることとなる。したがって、最新の活動に関するデータだけが分かっている場合に更新過程に代わるものとして用いることができる。
データが複数知られている場合には、Vを使わずにTt.p.を求めることができる。例えば、最新の地震とその一つ前の地震発生時を、それぞれtlast 、 tpenultとし、ずれの量をそれぞれUlast 、Upenultとすれば、

と求められる。この場合には更新過程と時間予測モデルを別々に適用して、両者の結果を比較検討することも可能となる。
確率密度関数としては、地震発生確率がTに依存するBPT分布と依存しない指数分布について、(1)式および(2)式の分布が用いられ、以下の式となる。
・BPT分布

・指数分布(ポアソン過程)

(ハ)最尤法によるパラメータの決定
任意に取り出した無作為標本がある確率密度関数に従うとしたとき、関数に内包される不定のパラメータの推定量を標本から見つけ出す方法として最尤法がある。更新過程として扱う地震発生間隔の分布について、最尤法によってパラメータを以下のように解析的に決定される。
BPT分布の最尤推定量

陸域の活断層については、明らかに固有のばらつきで地震を発生させる断層であることがわかっている場合を除いて、活動間隔のばらつきとして、共通の値α=0.24を暫定的に適用することが妥当としている。
プレート間地震に適用するばらつきについては、断層固有のばらつきを適用すること、プレート間地震に共通のばらつきの値を適用すること、陸域の活断層とプレート間地震の両方に共通のばらつきの値を適用することのうち、いずれが妥当か、今後のデータの蓄積を待って検討する必要があるとしている。