(6)神縄・国府津―松田断層帯地震

 (イ)断層モデル

 断層モデルは、昨年度「神縄・国府津−松田断層帯地震断層モデル検討ワーキンググループ」にて検討された2つのモデルを考えることとする(図4−4−32)。この地震のマグニチュードは8.0とされている。

 アスペリティモデルは、モデル−1、モデル−2のそれぞれで図4−4−33とした。地表付近の変位量が10mであるという地震調査研究推進本部の発表を考慮して、最大のアスペリティの位置は国府津−松田断層の地表部付近となるようにした。

 破壊開始点は入倉(2001)で述べられているように、断層面の下端から発生するとした。伝播方向としては、神縄・国府津−松田断層帯を一つの断層と見た場合、国府津−松田断層側から破壊が進行し、神縄側で曲がって停止しているように見ることが出来る。また、1999年の台湾集集地震においても南から進行した断層破壊が北部で曲がりながら停止したことが明らかになっている。神縄・国府津−松田断層帯地震においても集集地震との形状の類似性から南部(国府津−松田断層)から破壊が進行し北西部(神縄断層)で曲がりながら破壊が止まると考えることした。したがって、破壊開始点はどちらのモデルでも国府津−松田断層の南東端深部とした。

(ロ)地表面における波形の作成(モデル−1)

 図4−4−34に神縄・国府津−松田断層帯(モデル−1)の3次元差分法による長周期波形計算結果を示す。

 ハイブリッド法により工学的基盤での地震波形を作成し、その波形を表層地盤への入力と考えて等価線形応答計算を行った。このように求めた表層での波形例を図4−4−35に示す。

 図4−4−36には、波形から計算した計測震度、最大加速度、最大速度分布を示す。計測震度は市域の南部から南西部にかけて大きくなっている。最大速度は市の北西部でも大きくなっているが計測震度、最大加速度は大きくなっていない。ここでの最大速度の大きさの原因については、広域で波動の伝播状況を見てみると、国府津−松田断層の第一アスペリティから発生した表面波の影響であることがわかった。

(ハ)地表面における波形の作成(モデル−2)

 図4−4−37に神縄・国府津−松田断層帯(モデル−2)の3次元差分法による長周期波形計算結果を示す。

 ハイブリッド法により工学的基盤での地震波形を作成し、その波形を表層地盤への入力と考えて等価線形応答計算を行った。このように求めた表層での波形例を図4−4−38に示す。

図4−4−39には、波形から計算した計測震度、最大加速度、最大速度分布を示す。計測震度は市域の南西部で大きくなっており、震度7となる地点も数点見られる。計測震度の分布は国府津−松田断層の第一アスペリティからの距離にほぼ逆比例している。最大速度は北西部でも大きくなっているが、モデル−1の場合と同様に、国府津−松田断層の第一アスペリティから発生した表面波の影響であると考えられる。

 (ニ)READYを用いた50mメッシュでの震度分布

 上記に示した地表での地震動をもとにREADYにより50mメッシュの震度分布を求めた。

 図4−4−40上図にREADYにより計算したモデル−1の50mメッシュでの震度分布を示す。市域の南西部、南東部で震度6強の範囲が広がり、谷筋に沿って震度7となる地点も見られる。北部では震度5程度である。

 図4−4−40下図にREADYにより計算したモデル−2の50mメッシュでの震度分布を示す。市域の西部から南西部にかけて震度6強の範囲が広がり、震度7となる地点もやや広範囲に見られる。北部から北東部にかけてはやや値は小さく震度5強程度である。

 モデル−1とモデル−2とを比較すると、モデル−2の方が全体的に震度は大きくなっている。また、南関東地震の結果と比較すると横浜市内で平均的に見るとほぼ同じレベルであるが、市の南西部では神縄・国府津−松田断層帯地震の結果が大きな地震動となっている。

 (ホ)神縄・国府津−松田断層帯地震マップのまとめと課題

 ・READYによる計算の結果、モデル−1、2ともに震度6強の範囲が市域南西部にかけて広がる結果となった。モデル−1と2を比較すると、モデル−2の方が全体的に震度が大きくなる結果となった。

 ・神縄・国府津−松田断層帯地震については、地震調査研究推進本部地震調査委員会によりマグニチュード8程度の地震の発生可能性が発表されている。しかし、地震動予測に使用できるような断層モデルは公表されているものは見られない。

 ・今回計算に使用したモデルは、昨年度「神縄・国府津−松田断層帯地震断層モデル検討ワーキンググループ」において検討されたものである。昨年度の検討では、断層面上での平均すべり量を10m(モデル−1)および16m(モデル−2)としており、断層面積に比べて地震モーメントが大きなものとなっていた。そのため、今回の計算ではスケーリング則により、断層面積をもとに地震モーメントを決めることとした。

 ・計算を行う断層モデル作成の際にアスペリティを置いたが、その位置、規模については必ずしも十分な検討が行われていない。この設定によっては計算される地震動が大きく変わることから、更なる検討が必要と思われる。