(4)横浜市直下の地震

 (イ)断層モデル

 グローバルなパラメータは、「横浜市における直下型地震被害想定調査」(横浜市総務局災害対策室、平成2年)によった。マグニチュードは6.5である。断層位置図を図4−4−20に、断層パラメータを表4−4−2に示す。

 アスペリティの設定及び地震動の計算にはマグニチュードではなく地震モーメントM0の値が必要となるが、横浜直下の地震、東海地震、神縄・国府津−松田断層帯の地震については断層面積S(km2)から、佐藤(1989)によるM0とSとの関係式、

   logS=(2/3)logM0−14.9

 により、M0の値を求めることとした。

 アスペリティの設定は、壇他(2000)に示された方法によった。この手法では断層モデルの地震モーメント、断層面積、アスペリティの面積を設定すれば、各アスペリティのすべり量(D)と実効応力(Δσ)、さらに背景領域のすべり量と実効応力を求めることができる。

 断層全体の面積とアスペリティの面積との関係や、それぞれのアスペリティの比率等については、Somerville et al.(1999)や石井他(2000)により抽出された震源断層の統計的性質に基づいている。東海地震、神縄・国府津―松田断層帯地震についても同様に求めた。

 アスペリティモデルは図4−4−21のとおりである。アスペリティの位置は、横浜市への影響が大きくなるように上端にも置くこととした。また破壊開始点は断層下端中央とした。

 (ロ)地表面波形の作成

 図4−4−22に3次元差分法により計算した長周期波形を示す。

 また、図4−4−23にハイブリッド法により計算した、工学的基盤波の例を示す。地震の規模を反映して、継続時間は10秒程度と短くなっている。しかし、震源距離が短いため加速度値は大きく、1000galを超える地点もある。図4−4−24には、波形から計算した計測震度、最大加速度、最大速度分布を示す。いずれの値も市の中央部での値が大きくなっている。しかし、加速度の大きさに比較すると速度値の大きさはやや小さくなっており、波形には短周期成分が多く含まれていることがわかる。

  (ハ)READYを用いた50mメッシュでの震度分布

 地表の150地点での地震動をもとにREADYにより50mメッシュの震度分布を求めたものが図4−4−25である。市の中央部で震度6強の範囲が広く見られる。一方、北西部と南東部ではやや震度は小さく、震度5強程度である。

 (ニ)横浜市直下の地震マップのまとめと課題

 ・READYによる計算の結果、市の中央部で震度6強の範囲が広く見られ、北西部と南東部ではやや震度は小さく、震度5強程度となった。

 ・この地震は、「横浜市における直下型地震被害想定調査」(横浜市総務局災害対策室、平成2年)において想定された断層モデルを元にした地震である。

 ・最大アスペリティを浅部に置き、破壊開始点を断層下端としている。これらは、破壊の伝播方向の影響を考えると、地表での地震動が最大級になるようなパラメータの設定となっている。

 ・差分法による長周期地震動の計算では地盤モデルのグリッド間隔が大きいため、入力のパルス幅を3sとした。これは、断層モデルとして設定したライズタイムよりも長いものである。グリッドサイズを細かくすることにより、より短周期領域まで地盤モデルを考慮した理論計算を行う必要があろう。