(イ)共通反射点編集(CDP編集)
全記録の発振点・受振点座標を用いて、反射点(発振点と受振点の中点座標)の分布図を作成し、反射点の分布が密な位置を選び、重合測線(CDP測線)を設定した。図3−1−1にCDPの分布図示す。
CDP間隔 : 12.5m
*総CDP数 : 738
(ロ) 表層補正解析(Refraction Analysis)
図3−1−2に示すように、全ての現場原記録から(屈折)初動走時を読みとり、その値から発振点・受振点におけるタイムターム、および表層基底層速度を未知数とするインバージョン(改良タイムターム法)を行い、表層の構造を求めた。この結果を図3−1−3に示す。上図は得られた表層の厚さ、下図は得られた表層構造である。横軸は、測線の受振点番号を示す。
表層基底層の速度は約1.8〜2.0km/sで、水平方向の変化は少ない。表層速度を0.7 km/sと仮定した時の表層の厚さは、5 〜 30mの範囲であった。
この結果は、表層第一層の厚さの変化および標高変化に対する走時変化の補正(表層静補正)のデータとして用いた。
(ハ) 最小位相変換(Minimum Phase Conversion)
コリレーション処理後の震源波形は、ゼロ位相型となっているが、後に述べるデコンボリューション処理を行うと波形の歪が起こる。これを避けるために、震源波形をゼロ位相から最小位相変換するオペレータを設計し、それを原記録に適用する最小位相変換を行った。
(ニ) 振幅補償(Gain Recovery)
反射波の減衰効果を補正するため、ゲート長 2000 msecの自動振幅調整(AAC)を行った。
(ホ) デコンボリューション(Deconvolution)
発振点・受振点の特性の相違を補正し、分解能の高いデータを得るためのデコンボリューション(ホワイトニング デコンボリューション)を行った。テストの結果、以下のパラメータを使用した。
*ゲート長 : 2000msec
*オペレータ長 : 240msec
*ホワイトノイズ : 1%
*予測距離 : 4msec
(ヘ) トレースバランシング
以下の自動振幅調整を重合前に適用した。
*ゲート長 : 300msec
一連の処理の過程で作成された波形例を、図3−1−4(a)、図3−1−4(b)、図3−1−4(c)に示す。
(ト) 速度解析(Velocity Analysis)
定速度重合法(Constant Velocity Stack)を用いて行った。速度解析は、残差静制補正処理の前後で計3回繰り返し行った。速度解析例を図3−1−5(a)、図3−1−5(b)、図3−1−5(c)、図3−1−5(d)、図3−1−5(e)、図3−1−5(f)、図3−1−5(g)、図3−1−5(h)、に示す。
(チ) NMO補正(NMO Correction)
各速度解析点で決定した速度関数(To,V)を測線方向に内外挿することによって得られた速度(表3−1−3)を用いてNMO補正を行った。
(リ) 残差静補正(Residual Statics)
屈折波を用いた静補正では、比較的長周期の補正値は精度良く補正されるが、短周期の受振点・発振点固有の補正は不十分である。そこで、NMO補正後のデータに見られる連続性の良い反射波を利用して残差静補正を行った。補正の際に許される相関関数のラグ値は 8 msecとした。
(リ) CDP重合(CDP Stack)
MO補正、残差静補正終了後、各CDP内の反射波走時は、同一時間に並び、屈折波・表面波・ノイズ等は同一走時とならない。そこで、これらを足し合わせる(重合)ことで、S/Nの良い反射記録が得られる。テストの結果、オフセット範囲を10〜10000mと設定したため、標準重合数は30となる。
(ヌ) F−X予測フィルタ(f−x Prediction Filter)
重合断面上で連続性のあるイベントを強調し、ランダムノイズを抑制するために、F−X予測フィルタを適用した。オペレータ長を以下のように短く設定したため、フィルター効果は比較的弱い。
オペレータ長 : 3 Traces
ゲート長 : 30 Traces
ウィンドウ長 : 600 msec
(ル) 最終断面図(Filtered Stack)
重合断面に以下のバンドパスフィルターを施し、フィルター後重合断面とした。
・時間 0 − 1000 ms 8/10 − 40/45 Hz
・時間 1000 − 2000 ms 3/5 − 35/40 Hz
・時間 2000 − 2400 ms 1/3 − 20/25 Hz
・時間 2400 − 5000 ms 1/3 − 15/20 Hz
(オ) 時間マイグレーション(Time Migration)
重合断面図上では、反射波は、各CDP位置から反射面までの往復垂直走時がそのCDP位置に表現されている。従って、傾斜した反射面に対しては、重合断面図上の反射面の傾斜/位置が、真の構造から若干ずれてくる。これを補正し、各CDP直下の構造形態を表す様にする処理がマイグレーション処理である。
本測線では差分マイグレーション処理を行い、マイグレーション速度は平滑化した重合速度(100%)を用いた。
(ワ) 深度変換(Depth Conversion)
マイグレーション後の記録に対し、平滑化した速度関数を用いて、時間軸から深度軸へ変換を行った。
深度断面の基準面は、各CDP毎に、CDPを構成するデータの発振点・受振点の平均標高(Floating Datum)とした。