3−5−3 今後の展望

今年度の調査により、横浜市域の概略の3次元的な地下構造、特に、横浜市の一部で基盤深度が3500mを超えるような深い地域が存在するということを明らかにすることができた。

しかし、今年度の強震計記録の解析で使用可能であった地震の数は12個であり、方向もまだ偏りがあるため、横浜市域のより正確な3次元的な地下構造を明らかにするには十分ではなかったが、この問題は時間の経過とともに解析に使用可能な地震が増えることで解決されると考えられる。

横浜市域における正確な3次元速度構造モデルが得られると、それを基に過去の被害地震あるいは、将来発生する可能性のある地震に対して、震源のパラメーターを仮定することにより、横浜市の任意の地点における地震動を数値シミュレーションにより計算することが可能となる。この計算により、地下構造の地域性によって局所的に地震動が大きくなる地域の有無を確認し、地震動が大きくなる地域が確認された場合、その場所を特定することが可能となり、将来的な都市計画策定において非常に有用な情報を提供することができる。

しかしながら、ある地域における正確な3次元速度構造を得ることは通常は非常に困難なこととされている。

幸いなことに横浜市には、世界的にも例のない高密度の強震計ネットワークの観測網があり、それを有効に活用することによって、通常、地表から実施する微動アレイ探査、人工地震あるいは反射法探査などでは、困難とされている深部の地下構造に関する情報も得ることができる可能性がある。

さらに、地下浅部については、地表から実施する微動アレイ探査、人工地震あるいは反射法探査などで、より正確に地下構造を決定することができれば、強震計の解析で得られる深部地下構造についての精度向上にもつながると期待される。

具体的には、今後、次のような調査が必要と考えられる。

・今年度実施した微動アレイ探査データを解析し、深度約4km程度までのS波速度構造の地域変化、ひいては3次元的なS波速度構造を求める。

・従来よりも測線長の長い人工地震探査を実施することにより、浅部に加え、深部のP波速度(主として5.5km/s層を対象)を正確に決定し、その構造について調べる。

・反射法地震探査により、今回得られた基盤構造の凹凸について検証し、浅部の堆積層についてもその構造をより詳細に探査する。

・高密度強震計ネットワークで観測される、さらに多くの地震を使用して、逆解析を行い、より高精度の横浜市域直下10km程度までの大局的な構造を求める。また、反射法、微動アレイ探査の結果をあわせて深部から浅部までのより精度の高いP波、S波速度構造を求める。