5−4−7 結論

地震Aにおける地震波形の再現性や[図5−4−5−3−1]、地震Bにおける周波数1.0Hz以下(周期1.0sec以上)の振幅スペクトル比・伝達関数の一致具合[図5−4−5−4−2]などから判断する限り、地質情報を重視した4層モデル(前節5.3.2)と物理探査情報のみから求めた6層モデル(前節5.3.3)との間には、大きな優劣の差が見られない。両モデルの特徴を整理したものを、表5−4−7に示す。この結果を踏まえ、検討すると6層モデルでは@各速度の出現標高と残差ブーゲー異常との関係が複雑である。A実際の地質区分と各地層との対応が不明瞭である。B微動アレー探査実施地域外では適用が困難である。等の短所がある。それらのことから総合的に判断すると、モデルの用途にも関係するが、今回の調査対象地域を含む広域での多次元地震動解析を行う場合には、モデリング可能地域の範囲が広い4層モデルを提案する。

なお、前節5.4.1で述べたとおり、本調査における一次元地震動解析結果は、各地震のメカニズムの補正他を省略して得られたものである。地震基盤への入力波に対して、地震のメカニズムや震源からの射出角、震源距離の効果、地震基盤上面への入射角などを考慮した適切な波形補正を施すことにより、地震波形や振幅スペクトル比・伝達関数の再現性は、今回の結果以上に改善できると考えられる。 また、本調査では各層のS波速度が全く共通であり層厚のみ異なる速度構造モデルを用いて一次元地震動解析を行った。今後、たとえば観測波形が理論波形を上回る地域については表層に低いS波速度の層を挿入するなど、各地点で若干異なる速度や密度を与え、さらに散乱波やコーダ波などの影響を考慮した多次元計算処理を行うことにより、観測値と計算値との一致性はさらに高くなることが期待される。 これまでに述べた速度構造モデルの検証を考える上で参照した主要文献は以下のとおりである。

・ 神野達夫・先名重樹・森川信之・成田章・藤原広行(2003):金沢平野における3次元地下構造モデル、物理探査、56巻5号、pp.313−326.

・ 松岡達郎・白石英孝・梅沢夏美(2000):深部地下構造推定のための微動探査法の適用方法に関する検討−深層ボーリング資料を利用した位相速度の逆解析−、物理探査、53巻1号、pp.12−28.

・ 大崎順彦(1994):新・地震動のスペクトル解析入門、鹿島出版会、p299.

・ 吉田邦一・笹谷努(2000)、ボアホール地震計アレイ記録の解析による札幌における堆積層の地震応答、北海道大学地球物理学研究報告、63号、pp.43−64.