5−4−6 考察

地震Aの震源位置は各観測点に近いため、マグニチュードが比較的小さい(M4.5)にも拘わらずSH波の形状は極めて明瞭である[図5−4−4−2−1]。また、観測地震波形と理論地震波形との一致性は良好であるが[図5−4−5−3−1]、KMI、SMI及びTMHの3地点については観測波形の振幅が理論波形を上回っている。

他方、地震Bはマグニチュードが大きいものの(M6.3)、震央距離は非常に大きく(例:最も近い観測点であるSGN地点までの震央距離は約130km)、また震源深度は非常に浅い(5km深)。このため、観測波形には変換波やコーダ波、散乱波が多数混入しており、SH波の形状は必ずしも明瞭ではない[図5−4−4−2−2]。しかし、周波数1.0Hz以上(周期1.0sec以下)の成分を除去した地震波形振幅の増減傾向は、観測値、理論値とも概ね調和的である[図5−4−5−3−2]。

振幅スペクトル比に注目すると、地震A・Bともに、周波数1.0Hz以下(周期1秒以上)の範囲で特に目立つような観測スペクトルピークはみられない。理論スペクトルもまた、観測スペクトルと同様の傾向を示す。しかし、地震Aでは、周波数1.0Hz以上の高周波数成分が卓越し[図5−4−5−4−1]、逆に地震Bでは周波数0.7Hz以下の低周波数成分が卓越する[図5−4−5−4−2]。

次に、振幅スペクトル比に注目すると、地震Aでは、各観測点の振幅スペクトル比の観測値と理論値とは、周波数0.1〜2.0Hzの範囲で同程度の値を示すものの、増減の様子は必ずしも調和しない[図5−4−5−5−1]。一方、地震Bでは,振幅スペクトル比の観測値が理論値を全般的に上回るものの、それぞれの曲線の増減傾向は概ね一致する[図5−4−5−5−2]。

一般に、地震のマグニチュードが小さいほど、地震波に含まれる低周波数成分の割合は少ない。また、震源から放射される地震波の長波長成分の分布は、震源領域の大小によって増減する。つまり、地震のマグニチュードが小さいほど、震源領域から放射された地震波に含まれる長波長成分(低周波数成分)の割合は少ないと考えられる。地震A(M4.5)は地震B(M6.3)よりもマグニチュードが小さいため、地震波形及び振幅スペクトル比の一致・不一致に関して、上記のような対照的な傾向が生じたものと考える。

また、地震Aの観測波形の再現性が低かったKMI、SMI及びTMHの3地点は釜無川左岸と笛吹川右岸とに挟まれた場所にある。これらの地域では、モデルで設定された層よりもさらに軟弱な層(S波速度<0.4km/s)が、表層付近を広く且つ薄く覆っている可能性がある。