5−4−3 速度構造モデル

前節5.4.2のYDA 、kMI、SMI 、TMH,WKS及びKSIの各観測点に対して推定した、4層速度構造モデル及び6層速度構造モデルを、表5−4−3に一括して示す。P波速度及び密度は、前節5.3.1の回帰式(松岡・白石・梅沢,2000)を用いて、S波速度から計算した値である。なお、本報告書では観測S波のうちSH波のみを扱う方針を採用したため、表5−4−3に示すP波速度は以下の計算作業には使用しなかった。

 理論地震動の計算では、非弾性減衰効果に係るパラメータ、いわゆるQ値を考慮することが必要になる。一般にQ値の推定は容易ではないが、後述のとおり(5.4.5節)本調査では0.1〜2.0Hz程度の比較的低周波数(長周期)の地震波成分を用いて、比較的浅い構造(約2.0km深以浅)に対するモデルを検証するため、Q値の深度方向の変化は、解析結果には大きな影響を及ぼさない。一方、実際の地盤構造では深部になるほど圧密効果が高まると予想されるため、浅部から深部まですべての速度層が一律なQ値を有するとは考えにくい。そこで、本調査では経験式Q≒β/10(βはS波速度[m/s])によってQ値に深度方向の変化を与えることとした。