(3)コア観察結果

コア観察を実施して作成したコア観察カード・縮尺1/100のボーリング柱状図を巻末資料に、概略地質柱状図を図4−1−3−2に示す。

孔底までの区間で確認された地層群は、上位から上部礫層、韮崎岩屑流、中部礫層、黒富士火砕流、水ヶ森火山岩類と判断された。以下に各層の地質状況や対比理由について記述する。

@埋め戻し土

0.00〜3.37mは、礫混じり粗砂や細砂を主体とし、最上部には現生の植物根を含んでいる。この区間にはガラス片、陶器片、塩ビ片等が認められることから、埋め戻し土と判断される。1.30m付近から下位が湿潤しており、この深度はほぼ荒川の水面の位置に相当する。

A上部礫層

3.37〜37.70mは、上位から砂礫主体部、シルト主体部、砂礫主体部の順に累重し、その下位に韮崎岩屑流が分布していることから、海野(1991)の上部礫層と判断される。

3.37〜11.32mは砂礫層からなり、礫径はφ2〜4cm程度を主体として最大で9cm程度に達する。礫種は安山岩類を主体として、少量の花崗岩類や古期堆積岩類(泥質岩、砂岩)を伴う。基質は中粒〜粗粒砂からなる。

11.32〜34.90mはシルトを主体とし、中〜細砂や砂質シルトを挟在する。29.00m付近までは頻繁に腐植物や腐植質シルトを挟在し、一般に、下位から上位に向かって、砂(礫を含む場合もある)、砂質シルト、シルト、腐植質シルトの順に累重するユニットを構成していることが多い。

34.90〜37.70mは砂礫層からなり、礫径はφ2〜3cm程度を主体として最大で12cm程度に達する。礫種は安山岩類を主体として、少量の花崗岩類やデイサイトを伴う。基質は淘汰の悪い細粒〜中粒砂からなる。

B韮崎岩屑流

37.70〜121.40mは、安山岩の亜角〜亜円礫を多量に含み、同質の砂を基質とする淘汰不良の無層理堆積物からなる。この岩質と堆積構造とから、海野(1991)で引用されている、三村ほか(1982)の韮崎岩屑流と判断される。

安山岩礫は細礫〜巨礫大までと粒径の範囲が広く、緻密なものから発泡して多孔質になったものが含まれる。色調は灰色〜暗灰色のものが主体をなすが、赤褐色のものも含まれる。下限付近においては、安山岩類のほかに花崗岩類や古期堆積岩類の円〜亜円礫が含まれることがある。

C中部礫層

121.40〜141.55mは、上位から砂礫主体部、シルト主体部、砂礫主体部の順に累重し、その下位に黒富士火砕流が分布していることから、海野(1991)の中部礫層と判断される。

121.40〜124.10mは砂礫層からなり、礫径はφ2〜4cm程度の亜円礫を主体とし、礫種は安山岩類を主体として、少量のデイサイトや花崗岩類や古期堆積岩類(泥質岩、砂岩)を伴う。基質は中粒〜粗粒砂からなる。上限付近には酸化鉄汚染が認められる。

124.10〜129.11mはシルトを主体とし、砂礫や中砂などを挟在する。一部に腐植質シルトを挟在している。

129.11〜141.55mは砂礫層からなり、礫径はφ2〜6cm程度を主体としている。礫種は安山岩類を主体として、少量の花崗岩類やデイサイトを伴う。基質は淘汰の悪い中粒〜粗粒砂からなる。

D黒富士火砕流

141.55〜381.40mは、デイサイト礫、同質軽石および同質火山砂からほとんど構成される堆積物からなる。この岩質から、海野(1991)で引用されている、三村ほか(1982)の黒富士火砕流と判断される。

全体的には、さまざまな粒径のデイサイトの亜円〜亜角礫や数cm以下の軽石と中粒砂大を主体とする火山砂からなる。

礫種を見ると、ほとんどが灰色〜紫灰色を呈するデイサイトからなるが、緑色変質した安山岩がしばしば伴われ、古期堆積岩類や花崗岩類を稀に含んでいる。

全体的には粗粒な堆積物であるが、305m付近以深にはシルトが、320m付近以深には腐植物(炭化はしていない)がしばしば含まれるようになる。また、しばしば灰白色の細粒凝灰岩を挟在しているが、多くの場合、火山砂から始まるような上方細粒化のユニットの最上部に分布しており、必ずしも降下火山灰起源とは認定しにくいものが多い。

全層準にわたり、葉理が多く認められ、その範囲は0〜20°程度で10°程度が多いが、深度方向での明瞭な傾向は認められない。

以上の特徴を考慮すると、全体が黒富士火砕流とまとめられる堆積物というよりは、黒富士火砕流を主要材料として流水によって堆積した堆積物から主に構成されていると判断される。

ここでは、既往資料や文献と対比することを考慮して、便宜上黒富士火砕流の名称を用いることとした。

E水ヶ森火山岩

381.40〜500.00mは、塊状緻密な安山岩、安山岩質凝灰角礫岩などからなり、強い変質作用を受けていないことから、比較的変質の進んでいる太良が峠火山岩ではなく、水ヶ森火山岩に対比されると判断される。

381.40〜383.70mは塊状で緻密な安山岩溶岩からなり、顕著な風化が認められない。下限は20°のせん断面からなり、その下位10cmには粘土が認められ、下限が断層で画されていると考えられる。

384.82〜480.72mは、安山岩質凝灰角礫岩からなる。安山岩礫の径は最大で40cm以上にも達する。基質は同質凝灰岩で中〜粗砂大のものが多く、淘汰は良くない。最上部3m程度は、角礫の輪郭がやや不明瞭となる程度まで変質を受けている。465〜475m付近は、固結度が相対的に小さい。

480.72〜500.00mは安山岩溶岩で自破砕状を呈する。

なお、安山岩〜凝灰角礫岩中には稀に粘土を伴う熱水脈が認められる。