(5)解析結果

残差ブーゲー異常図によると、甲府盆地では負の強いブーゲー異常が認められる。この負の異常域は甲府盆地の形状とよく一致している。ブーゲー異常値は盆地南西端で最も小さくなっており、基盤が南西方向に傾斜していると推定される。また、盆地の西側および南東側の境界付近には断層が確認されているが、この断層よりも外側にブーゲー異常値の急変部があることから、これらの断層は逆断層であると考えた。

平成14年度の調査委員会で、解析する上で単純な構造モデルを考えたほうが良いのではとの指摘も受けたため、最終的には2層構造で解析した。以下に各断面の解析結果について述べ、その解析結果を基に、図3−2−4−12に重力基盤面の三次元表示することを試みた。

@ 測線A−A’(図3−2−4−7

甲府盆地を東西に横切る測線で、平成13年度の反射法地震探査測線にほぼ沿っている。堆積層の東西どちらにも断層が確認されており、東側に曽根丘陵断層群、西側の市之瀬台地に市之瀬断層帯がある。そのため、想定モデルでは盆地の外側に向かって密度が急激に増加するモデルを考えた。その結果によると、盆地の中央部では基盤と堆積層の境界はほぼ平坦であるが、距離程22km付近で若干の基盤の盛り上がりがあり、測線東側では想定した基盤密度2.67 g/cm3より大きい2.80 g/cm3とすることで残差が小さくなった。

A 測線B−B’(図3−2−4−8

甲府盆地をほぼ南北に横切る測線である。南側の境界部の曽根丘陵で断層が確認されている。想定モデルは、盆地の外側に向かって密度を急激に増加させ、曽根丘陵断層群より南側は基盤密度2.67 g/cm3、更に南側は測線A−A’と同様に2.80 g/cm3とすることで残差が小さくなった。

断面解析では、既存資料から測線の北端から南側に向かって堆積層の厚さを増加させるモデルを考えた。基盤境界を他の測線と同一にするために、その際の堆積層の密度は0.05 g/cm3小さい2.10 g/cm3とした。

B 測線C−C’(図3−2−4−9

測線B−B’と同様に甲府盆地を南北に横切る測線で、平成14年度の反射法地震探査の測線位置とほぼ同一である。地質図などの既存資料から、距離程9km付近に曽根丘陵断層群があり、その南は火山岩の存在が予想されたため、断層から南側(9〜12km)は基盤密度と同じ2.67 g/cm3を想定した。更にその南側には中期中新世の玄武岩溶岩が露出していることから、測線A−A’ 測線B−B’と同様に2.80 g/cm3と想定した。堆積層の密度は測線B−B’と同様の2.10 g/cm3とした。また、物理探査データやボーリング結果から、測線の北側の下部には鮮新世の安山岩溶岩があると推定されるため、2.20 g/cm3を仮定した。

C 測線D−D’(図3−2−4−10

乾徳徳山から甲府駅付近を通り鰺ヶ沢町に至る測線である。地質図などの既存資料

から、測線の南部(距離程5km以南)では、中期中新世の玄武岩〜安山岩溶岩・火砕岩が分布する。そのため、その部分の想定モデルの密度は2.37 g/cm3を仮定した。また、基盤は2.67 g/cm3、堆積層は2.20 g/cm3を想定した。                   

D 測線E−E’(図3−2−4−11

塩山から石和町南部を通り甲西町に至る測線である。測線北部(距離程16〜30km)の下部には鮮新世の安山岩溶岩があると推定されるが、堆積層で2.15 g/cm3、基盤密度と同じ2.67 g/cm3を想定した。