5−2−3 微動観測

本年度調査の使用機器を表5−2−3−1に、観測諸元を表5−2−3−2に、微動観測の作業手順を図5−2−3にそれぞれ示す。また、本年度調査で実施した微動観測の日程(本観測のみ掲載)を表5−2−3−3に示す。

事前準備として、各観測点の地震計設置点の予備設定を都市計画図(縮尺1/10,000)上で行い、それを元に観測場所の下見を実施して、設置場所の確保の可否、ノイズ源の有無等を確認した。地震計の設置が困難な場合や、交通ノイズなど非定常信号のレベルが大きく良好な観測点でない場合には、当初の設置点を中心とする誤差円(アレー半径の5.0%を半径とする円)の範囲内で、できるだけ良好な観測点を選定した。地震計設置点が私有地の場合、所有者の許可を求めた。また、公道を使用する場合は、本観測開始前に公道を管轄する自治体および各警察署に対して道路利用許可を申請した。

観測は各点独立同時記録方式を採用し、地震計1台毎に記録器を接続して微動データを収録した。観測に際しては、地震計の水平を保ちつつ充分に地面と接するように注意した。地面が柔らかい場合には、木製のスペーサを使用した。

また、観測機材の数量の都合や、実際に地震計設置点の現場状況の都合を考慮して、6重同心円形アレーの全19地点に地震計およびレコーダを同時配置する代わりに、同心2重円形アレーによる7点同時微動観測を計3通り繰り返した。具体的なアレー半径の組み合わせかたは、(50m, 100m)、(200m, 400m)および(800m, 1600m)の3通りである。以後、これらの同心2重円形アレーをそれぞれ「小アレー」、「中アレー」および「大アレー」と略称する[後出の図5−3−3−1を参照]。

調査対象地域は全般的に、日中静かな場所であるため、観測は原則として昼間(当日9時頃〜同17時頃)に実施した。ただし、一部の市街地(甲府市内および田富町内)では昼間の交通往来が激しく、非定常ノイズの混入が懸念されたため、これらの地域では観測時間帯を深夜(当日21時頃〜翌日5時頃)に設定した。観測時間については、良質の微動データをできる限り多く観測する目的で、小アレーおよび中アレーで延べ2時間以上、大アレーで延べ4時間以上を確保した。本観測時のデータサンプリング間隔は、前年度調査と同じく100Hzに設定した。

観測スケジュールは観測開始前にホストコンピュータから各レコーダへ転送し、所定の時刻になると全観測機器が同時動作するように設定した。また、本年度調査では、前年度調査よりも観測時間を延長したことを考慮し、GPSを利用したレコーダの時刻較正作業を本観測前後および本観測中約1時間毎に実施するようにスケジュールを組んだ。

観測終了後、速やかに記録器を撤収し、各レコーダのデータをコンピュータに転送して粗解析を行い、観測データの品質を確認した。粗解析の内容は、微動波形の表示(後節5.3.1を参照)、パワースペクトルの計算(同・5.3.2を参照)、空間自己相関係数の計算(同・5.3.3を参照)および平均前の観測位相速度の計算(同・5.3.4を参照)である。データ品質に問題があると判断した地点については、観測時間帯を昼間から深夜に変更するなどして再度観測を実施し、できる限り良質な観測データを取得した。

なお、観測実施期間中、地震計のキャリブレーション(ハドルテスト)を隔日で実施し、そのつど計器特性の一致性を確認した。ハドルテストの結果は巻末資料11に示す。

表5−2−3−1  使用機器

表5−2−3−2  観測諸元

図5−2−3    微動観測の作業手順

表5−2−3−3  微動観測日程(本観測のみ)