4−2 屈折法地震探査のデータ解析

横軸に各発震点からの距離、縦軸に初動読み取り値をプロットしたものを図4−2に示す。ここでプロットした初動読み取り値は、発震記録から読み取った値そのものではなく、両端の発震点であるVP1001とVP1003を直線で結ぶ仮想測線に投影し、VP1002を距離の原点として、距離・走時を補正した値になっている。表4−1には屈折初動読み取り結果(発震記録から読み取ったオリジナルの走時および仮想測線投影後の補正値)を示す。

図4−2の走時曲線では、各層の屈折波の見かけ速度も示してある。堆積層中を通る初動の見かけ速度として、VP1001,VP1002付近では2200〜2500m/s前後の走時が観測されている。一方VP1003付近では3200m/s程度の走時となっており、明らかに測線の南端では堆積層が速いと考えられ、横方向(南北方向あるいは東西方向)に不均質な地質構造であることが推測される。

オフセット距離の長い走時からは、表層の下の層および基盤からと思われる屈折初動が観測され、例えばVP1003の走時からは4000m/sおよび6800m/sの見かけ速度が、VP1001の走時からは4300m/sおよび7800m/sの見かけ速度となっている。但し、基盤からの屈折波では初動が不明瞭であるため、初動の読み取り精度および見かけ速度の精度はそれほど高くないと考えられる。

速度構造モデルの推定では、まず3.4.2(3) 表層補正解析で求めた表層構造を参考にして、表層速度および表層基底層の深度を仮定する。また表層より下の構造については屈折走時の見かけ速度およびインターセプト時間を読み取り、発震点直下の屈折面の速度および深度を計算する。同時に反射法による深度断面図および速度解析の結果等を参考にしながら、基盤の形状や速度構造を推定し、大局的な速度構造を求める。その後、岩崎(1988)による波線追跡プログラムを用いてレイトレーシングを行い、試行錯誤的に速度構造モデルを微調整しながら理論走時と実際の初動走時を合わせ、最終的な速度構造モデルを求めた。

図4−3−1には最終的な速度構造モデルを、(b)には速度構造モデルの波線図を示す。また図4−4には各発震点における屈折波の理論走時と観測走時との比較を示す。

基盤(5000m/s層)は測線の北側で地表からの深度600m(MSLから400m)であり、南にいくに従い徐々に深くなっていき、測線中央部で地表から1800m、測線南端で2400m(MSLから2000m)となる。但し、南端付近の基盤の形状については、図4−3−2の波線図からも明らかなように、基盤からの波線は観測されておらず、また反射法の断面からも明瞭な反射イベントが見られないことから、南端部分の基盤深度について不確定性が大きい。また基盤層の速度としては5000m/sを仮定しているが、初動読み取り値の精度が悪いため、それほど精度はない。