(3)データ処理方法

データ処理は、通常、図2−1−5に示す標準データ処理フローに従って、実施する。以下、主要なデータ処理方法について記載する。

<重合前処理>

データ編集、振幅調整、各種フィルタ処理、表層補正及び速度解析を行う。振幅調整は、弾性波の球面発散や非弾性効果による減衰の補償を目的として実施される。各種フィルタ処理には、特定の周波数帯だけを通す帯域通過フィルタや波形変換を行うデコンボリューション処理等があり、反射波の強調、波形の整形やノイズの除去を目的として実施される。

陸上の反射法データ処理では、一般的に重合測線を設定する。陸上の測線は、地形などの影響により測線の屈曲を余儀なくされ、そのために反射点が分散するので、反射点分布の密な地点を結んだ重合測線を設定し、その測線に沿った断面図を作成する。

<表層補正>

地表付近には、弾性波速度が極端に遅い(一般に、P波速度で1000m/sec以下)表層部(風化層)が存在する。この表層部の形状の不規則性は、地下からの反射波の走時のずれとなって現れ、重合後の記録において著しい品質低下を招く。この対策として地表付近の表層を除去し、表層基底の速度層に置換する表層補正(時間補正)が行われる。

表層補正値を求めるために、屈折初動の走時に基づいた表層構造解析を行う。屈折初動の解析には、タイムターム法が実用的な方法として用いられている。タイムターム法とは図2−1−6の概念図に示すように、第2層からの屈折波の観測走時(Tobs)を

・各Locationにおける第2層(表層基底)の速度(Vsw)の項

・発震点・受振点において第1層を波が伝わる時間(タイムターム値STT1、RTT1)の項に分解し、多数の初動値からこれらの値(未知数)を連立方程式として解く方法である。

これらのタイムターム値・表層基底速度と、別途、短いオフセット範囲の観測走時から算出した表層速度(Vw)を用いて、表層の厚さ(SZ1、RZ1)を計算することができる。この手法は、表層構造解析だけでなく、2層構造仮定での通常の屈折波解析にも用いることができる。

<速度解析>

速度解析とは、NMO補正に必要な速度情報を得るための解析である。前述した(2.1.1)式でのRMS速度 は、水平多層構造の場合は、地表と反射面までの地層の平均的な速度として、次の式で与えられる。

式2−1−2

反射法における速度解析とは、このRMS速度を求めることに他ならない。実際の速度解析では、個々の反射イベントの曲率を解析してRMS速度を求めるのではなく、様々な速度に対してNMO補正と重合を繰り返し行って、最も反射イベントが鮮明で振幅が大きくなるような速度をRMS速度として抽出する。通常は、後述する本調査の速度解析例に示すように、一定の速度でNMO補正を行って重合したパネル上から最適な速度を選択する定速度重合法が一般的に用いられる。

RMS速度が求まると、(2.1.2)式を変形して、次の式から区間速度や平均速度を計算し、深度と往復走時との関係式を得る。

式2−1−3

NMO補正値( − )は、速度解析から得られた を(2.1.1)式に代入して

式2−1−4

で与えられる。

<重合後処理>

基準面補正、マイグレーション処理、深度変換などを行う。傾斜構造の場合は、CDPギャザーを構成する各トレースの反射点位置は異なるが、オフセット距離に対する走時は水平構造の場合と同様に、双曲線に近似される。 この反射イベントにNMO補正を適用して重合を行うと、CDPから傾斜面への法線の沿った往復走時の記録が得られる。このような場合、重合後の記録断面図上での反射点位置は真の位置からずれるので、傾斜イベントを真の位置に移動させるマイグレーション処理(図2−1−7)を施す。

基準面補正は、重合後の記録断面図において各トレースの標高を一定に揃える操作であり、通常は標高ゼロメートルを基準とする。マイグレーション処理後は、速度解析などで得た速度構造に基づいて往復走時を深度に変換して、深度断面図を作成する。

マイグレーション後の記録に対して、速度解析から得た速度構造に基づき、時間軸から深度軸に変換し、最終的に深度断面図を作成する。