(3)取得データの品質

[異常震度域]

弓ヶ浜半島平野部で取得した反射法現場記録例を図2−11−1図2−11−2図2−11−3図2−11−4に示す。これらの記録例は、原記録に対し、データ処理用ソフトウェアを用いて編集したもので、発震点から受振点までの距離に比例した位置に取得データを表示している。以下、各現場記録例の特徴について記載する。

1) 美保関町宇井地区で発振した記録 : 図2−11−1

発震点から約2kmまで初動が到達している。初動速度は、宇井地区では約3500m/sec、境港市市街地では約2000m/secの速度を示す。

2) 境港市の市街地で発振した記録 : 図2−11−2

人家への振動の影響を避けるために、起振車の台数およびスイープ回数を減らして発振を行なっているのと周辺のノイズレベルが高いことで、概して地震波の伝播状況は良くない。地表には低速度の表層部が存在する。

3) 境港市の郊外で発振した記録 : 図2−11−3

初動は明瞭であるが、その走時は左右非対称形を示す。発震点近傍での初動(第1層の屈折波)は北側で約1500m/sec、南側で約1700m/secを示す。第2層の速度は、南北側で概ね2500m/secを示す。1.5秒から2秒の区間に明瞭な反射波が確認できる。

4) 米子空港付近で発振した記録 : 図2−11−4

初動走時は明瞭であり、発震点近傍において約1900m/secの速度を示す。地表から1秒までの区間に、明瞭な反射波が確認できる。

5) 米子市富益町で発振した記録 : 図2−11−5

初動は非常に明瞭ある。発震点近傍では、初動走時はほぼ対称形であり、約1900m/secの速度を示す。発震点の東南東側約2.5kmから先では、第2層からの屈折波が確認できる。この屈折波は、約4000m/secの速度を示す。一方、発震点の北西側には、第2層の屈折波は見られない。

[弓ヶ浜半島部と余震分布域にまたがる区域]

1)米子市安部区での発振記録 : 図2−12−1

弓ヶ浜半島部と余震分布域において、それぞれ160受振点(合計320点)で観測している。発震点近傍で初動走時は非対称形を示し、南側では約2200m/sec、北側では1700m/secの速度を示す。余震分布域では地震波の伝播状態が非常によく、第2層からの初動屈折波が見られる、この初動は、約4400m/secの速度を示す。一方、発震点の北側では、約350mから先において第2層の屈折波が確認できる。その速度は、約3000m/secを示す。

2) 安来市中海干拓地での発振記録 : 図2−12−2

弓ヶ浜半島部と余震分布域において、それぞれ160受振点(合計320点)で観測している。発震点近傍で初動走時はほぼ対称形を示し、約3200m/secの速度を示す。初動の速度は、発震点から離れるにつれて、徐々に速くなる。発震点から南側約4km〜5kmの区間では約4000m/secの速度を示す。

[余震分布域]

1)伯太町での発振記録 : 図2−13−1図2−13−2図2−13−3

初動は非常に明瞭であり、約3800m/secの速度を示す。受振区間全体に渡り、ノイズレベルが低く、取得記録のS/Nが高い。受振区間の南側の4秒〜6秒にかけて深部反射波と推定される反射イベントが確認できる。

2)西伯町猪小路地区での発振記録 : 図2−13−4

初動は非常に明瞭であり、約3800m/secの速度を示す。受振区間全体に渡り、ノイズレベルが低く、取得記録のS/Nが高い。受振区間の中央部から北側の5秒〜6秒にかけて深部反射波と推定される明瞭な反射イベントが確認できる。

3)西伯町鴨部地区での発振記録 : 図2−13−5

初動は非常に明瞭であり、約3800m/secの速度を示す。受振区間全体に渡り、ノイズレベルが低く、取得記録のS/Nが高い。猪小路地区で確認した深部反射波は不鮮明である。

4)西伯町上中谷地区での発振記録 : 図2−13−6

反射法調査発振区間の南端近傍での現場記録例である。初動走時は、北部よりも速く、約4500m/secの速度を示す。