3−1−3 <総合解析結果(弾性波探査)>

* 屈折法のレイトレーシングで求められた速度境界は、反射法断面図の反射面と対比することができ、反射法、屈折法でそれぞれ求めた速度は、解析精度の範囲内で整合している。

* 総合解析により求められた堆積層のP波速度は深度と共に漸増し、0.8km/s〜3.4km/sを示している。上位から0.8km/s(表層)、1.6〜1.7km/s(表層基底〜A面:下総層群相当層と上総層群上部に対応)、1.8〜2.5km/s(A面〜B面:上総層群に対応)、2.5〜3.4km/s(B面〜C面:主に三浦層群相当層および下位層に対応)と求められた。

検討課題

3ヵ年にわたる首都圏(東京都)の反射法・屈折法地震探査結果から、深度が3000mを超える深部基盤構造が明らかにされた。また、神奈川県や千葉県における既存反射法結果との総合的な解釈から、広域的な深部地下構造を大局的であるが把握することができた。今回の結果と神奈川県・千葉県・埼玉県の調査結果をまとめて基礎資料として、周辺の観測井データやブーゲー異常図を基にした速度モデルの面的な補間作業を行うことにより、既存モデルより精度の高い関東平野における3次元地下構造モデルの作成が期待される。

一方、首都圏地域で基盤深度が深いと推定されている未調査地域(東京湾岸部)や、基盤深度の急変が予想される立川断層の延長部(多摩地域)においては、現状では、深部構造の信頼性が十分あるとは言えない。また、完新統(下総層群)が厚く堆積している地域(例えば、東京都中央部から東部)においては埋没した断層が潜在したり、地下構造が局所的に変化している可能性がある。これらの地域に対する地下構造および活断層の調査を実施し、基盤深度および堆積層速度構造の精度を高めることが、今後の課題として残される。

 地下構造調査の成果である速度構造モデルは、想定地震の強震動予測作業における入力データとして活用されることが期待される。ただし、推定された地下構造モデルの信頼性を向上させるためには、近年、整備・蓄積されている強震観測データを用いて、中規模地震に対する地震動シミュレーションによる検証・評価を積み重ねておくことが望ましい。

近年、南関東地震、東海地震などの想定大地震の地震動被害を考える上で、長周期地震動が長大構造物(石油タンク、高層ビル)に与える影響が注目・懸念されている。深部地盤を対象とした地下構造調査の調査結果は、この長周期地震動の挙動に対して直接的に影響を与えるものであり、成果の活用が期待される。