(1)データ取得作業

P波反射法の測線では都市部であるため道路は舗装されており、受振器は極力植込みや道路横の露出地面に設置したが、利用できない場合はアスファルト上にアルミ製受振器スタンドを使用して設置した。受振点位置が交差点や三叉路の中にあたる場合は、正規間隔で設置せず受振点位置を近くの歩道側にずらした。また、交差点・三叉路付近、停留所・商店出入り口等で歩行の邪魔となるところでは、受振器を固めて隣接して設置する「バンチング」を併用した。バンチングが多くなる市街地部では、作業を安全かつ効率的にするため、従来の9個組の受振器グループに変えて、3個組の受振器グループを用いた。

調査測線と交差する道路が多数あり、特に交通量の多い幹線道路での本線ケーブルの道路横断には、信号柱および電柱を用い高架渡しを行った。この他の交差点では、ケーブルをゴム製のカバーで覆って道路面を横断した。

調査受振測線は、環状八号線(一部、笹目道路)沿いの南北方向に設定したが、ノイズレベルを抑えるために環状八号線の裏通りを極力使用した。特に、白子川、石神井川、善福寺川、神田川、谷戸川などの河川緑道を積極的に使用することで、車両などの人工ノイズを大幅に回避することにした。この結果、測線は理想的な直線状にはなっておらず、ジグザグ状に屈曲している。これにより、浅部・中深部域の反射イメージングに悪影響を及ぼすことが懸念されるが、深部地盤を対象としている今回の調査目的を考えれば、環状八号線沿いに受振器を設置するよりも適切であると判断した。

以下に、公共地において発振点、受振点として使用した場所(許認可、届けの必要があった場所)の一覧を示す。これ以外に、300軒以上の居住者のご協力を得て、住宅横に受振器等を設置することができた。

表2−2

表2−3

受振測線は、デジタルテレメトリー型探鉱器(G−DAPS測線)と独立型探鉱器(MS2000測線)の2系統で構成した。MS2000測線は、特に、ケーブルの信号柱共架(空中渡し)作業の必要な交差点が多数存在する測線中央部(杉並区)を中心に展開した。MS2000探鉱器は独立して観測データを収録するため、デジタルケーブルを観測車(観測室)まで伸ばす必要がない。このため、山間地などのいわゆる難地域だけではなく、都市部における地震探査作業においても作業効率に優れ、今回の調査ではその威力を発揮した。ただし、居住者、通行者に対する地元周知は徹底して行う必要があった。特に、測線中央部から南部にかけては、住宅密集地であり、広報掲載、チラシ配布、看板掲示により、地元周知を念入りに行った。

 発振について、大特進入禁止・時間通行規制・スクールゾーンが多い住宅地をバイブロサイス車が通行するために、道路使用許可申請等に多くの準備時間を要した。発振作業に当たっては、発振点毎の騒音・振動の様子を確認しながら、適宜

  ・スイープ数

  ・出力レベル

  ・バイブレータ車の台数および種類

の調整等を行った。

原則として1〜2台稼働、20回スタック/点を基準としたが、各発振点の状況に応じて対処した。バイブレータ発振出力についても状況に応じ、最大出力の10〜90%に変えて行った。また、現地状況の許す限りスタック回数およびバイブレータ発振出力を上げ記録質向上に努めた。環状八号線の発振はノイズレベルの低い時間帯である夜間作業とし、記録の向上をはかった。

その他、資材置き場、観測車(観測室)置場として東京都水道局三園浄水場、東京都立光が丘公園、三井不動産高井戸運動場、石丸電気世田谷店駐車場を借用し、調査期間中は全面的にご協力を頂いた。

現地調査の作業状況については、付録1に現場写真を示した。図2−2−6−1図2−2−6−2図2−2−6−3図2−2−6−4図2−2−6−5図2−2−6−6に反射法の現場記録例を示した。各図は、1発振点に対して地表の受振点で観測した記録であり、横軸は受振点の番号、縦軸は時間となっている。参考のために各図の上部に測線図も同時に添付した。