3−1−4 本調査逆解析結果の信頼性

前節2.2.3あるいは前節3.1.3で述べたとおり,図2−2−35図2−2−36図2−2−37図2−2−38図2−2−39図2−2−40に示す逆解析最終解は,基本モード分散のみを考慮して得た結果である。各図中に水色表示で示した観測位相速度は,逆解析の実施に際して省略したデータを示す。

ここに,除外したデータはいずれも,長波長の表面波に係る情報であることに注意したい。一般に,深部地下構造の推定を行うためには,より波長の大きな表面波データを利用することが望ましいと考えられる。したがって,本調査のように長波長表面波データの一部を省略して逆解析計算を行った場合,地震基盤など深部構造に関する重要情報を確実にモデルへ反映させることが可能であったかどうかを確認しておくことは,計算結果の信頼性を高める上で有益な措置である。

図3−1−11−1図3−1−11−2図3−1−11−3は,本調査で得られた逆解析結果を利用して,中深部以深(第4層以深)の各層の有無が理論位相速度の変化に及ぼす影響を計算したものである。モデル@(オリーブ色表示)は第1層から第4層まで,モデルA(青色表示)は同じく第5層まで,およびモデルB(緑色表示)は同じく第6層までが存在する場合を,それぞれ示す。モデルC(赤色表示)は,最終解と同一である。位相速度の比較図(各段の左側図)では,各モデルに対応する理論位相速度,およびこれらの理論位相速度が観測位相速度から乖離し始める周波数を,各モデルに対応した色別表示で記入してある。これらの図から明らかなとおり,どの調査地点でも,逆解析に利用した観測位相速度のうち,特に周波数範囲約0.20Hz〜0.35Hz(周期範囲約2.8sec〜5.0sec)のデータを精度良く再現するためには,S波速度約3.0km/sec以上の層(地震基盤層)をモデルに導入しなければならない。

よって,本調査の逆解析計算で使用した観測位相速度には,周波数約0.35Hz以下(周期約2.8sec以上)に深部構造(地震基盤)を反映した情報が含まれているため,今回得られた計算結果は充分信頼に足るものと判断できる。