(1)観測位相速度から予想される地下構造の特徴

図2−2−31に示したとおり,調査地点FNDにおいては,周波数0.5Hz以上(周期2.0sec以下)のアレイ半径別の位相速度が,同一周波数に対して,かなり幅をもった値を示す。周波数0.5Hz以上の位相速度は,主としてFNDSアレイ(半径50m,100m)における空間自己相関係数から計算したものである。FNDSアレイに対応する空間自己相関係数(表2−2−5及び図2−2−28を参照)は,FNDMアレイやFNDLアレイに対応する計算結果,あるいは他の調査地点での計算結果(図2−2−29及び図2−2−30)とは異なった,非常に複雑な増減変化を示す。

調査地点FNDは,他の調査地点YYGやCYDとは異なり,大規模河川(荒川)の流域にアレイ中心を有する調査地点である。特に,FNDSアレイ付近の表層付近では,河川堆積物の影響によって,水平方向の短波長構造不均一が顕著であると予想される。したがって,FNDSアレイ直下の速度構造を水平成層モデルとしてアレイ半径毎に平均視した場合,互いに異なった構造として認知する可能性が高い。これが,同一周波数でのアレイ半径別の位相速度に,大きな隔たりを生じさせた原因であろうと推定される。

解析では,2.2.5(5)に示したようにアレイ半径別に求めた位相速度の平均を用いている。これは,定性的には水平方向に不均一な構造を平均化させたものを求めていると考えられる。

他方,図2−2−34に注目すると,周波数0.3Hz付近を境として,高周波側では調査地点FNDの観測位相速度が,他の2地点よりも明らかに遅く,逆に低周波側では全調査地点の観測位相速度が,互いに近い値を示す。観測位相速度の相違が明瞭となる深度を,周波数0.3Hz付近の表面波半波長から見積もると,どの調査地点でも共通で約1.7kmである(≒1.0[km/sec]/0.3[Hz]/2)。

以上から,極めて粗い見積もりではあるが,深度約1.7km以浅では,調査地点FNDでS波速度の遅い層が他の調査地点よりも卓越しており,特に調査地点FNDの表層付近では水平方向の短波長構造不均一が顕著に存在すること,一方,深度約1.7km以深ではどの調査地点もほぼ類似した速度構造を有することが予想される。

図2−2−38及び表2−2−9に示す逆解析結果は,上記で予想した地下構造の特徴をよく表している。