ｔｉｔｌｅ

（１）原理
微動は，弾性波動論的には実体波（Ｐ波，Ｓ波）や表面波（レーリー（Ｒａｙｌｅｉｇｈ）波，ラブ（Ｌｏｖｅ）波）の集まりである。観測された微動には，震動源，伝播経路，観測場所の地下構造などの情報が，実体波や表面波の形で含まれている。微動の発生源は一般に，地表面及び海底面にあると考えられる。したがって，微動を構成する波は実体波よりも表面波のほうが優勢であると見なしてよい。

一方，表面波には「分散」という性質がある。分散は，波の周期（周波数）によって伝播速度（位相速度，群速度）が変わる現象であるが，表面波の場合，分散は，地下構造と密接な関係のあることが知られている。したがって，表面波の分散すなわち表面波の周期（周波数）と伝播速度の関係がわかれば，地下構造の推定が可能である。

微動アレイ探査法は，観測した微動波形から表面波の分散を検出し，観測場所の地下構造を推定する方法である。その内容は概略次の①～③の手順からなる（物理探査学会（編），１９９８）。

すなわち，

①　微動観測

地表に面的に展開した群列地震観測網（アレイ）により微動を観測する。

②　位相速度の推定

前記①で得た微動データから，統計的な計算手法（空間自己相関法）によって表面波分散のデータ（位相速度－周期の関係）を抽出する。

③　地下構造の推定

層厚及びＳ波速度を主要なモデルパラメータとする水平成層構造モデルを想定し，理論計算した分散データが前記②の分散データと整合するまで，モデルパラメータの反復改良を行う。

である。

なお，上記①のアレイの形は，次の（２），（３）において述べるが，②の分散の検出法に関係する。本調査では，分散の検出法として「空間自己相関法」を採用した。上記③では，層厚およびＳ波速度を主要なモデルパラメータとする水平成層構造モデルを仮定し，観測から得られた分散とモデルによる分散との関係が「最適」となるように，モデルの反復改良を行う。ここでいう「最適」とは，反復改良の操作（すなわち逆解析）を行うために用いた「遺伝的アルゴリズム（略称：ＧＡ）」の中で設定される。