7−2 データ解析及び解析結果

解析は図7−2−1に示すフローにしたがって行った。その手順を以下に示す。

ア 解析に用いた重力データ

主に石狩平野を解析対象にするため,日本重力CD−ROM(地質調査所編集,2000)の中から,仮定密度2.0g/cm3のブーゲー重力異常格子点データを解析に使用した。なお,格子点間隔は1kmである。ブーゲー重力異常を図化したものを図7−2−2に示す。

イ 傾向面解析

調査地域を含む北海道南部〜中部にかけての広範囲のブーゲ重力異常(格子点データ)に対して,その傾向面を3次曲面と仮定し,最小二乗法により格子点データとの誤差が最小となるような曲面を求めた。得られた傾向面の調査地域での形状を図7−2−3に示す。調査地域での傾向面の重力値は,東南東方向に対して緩やかに減少している。これは,南北方向にトレンドをもつ石狩低地帯に向かって重力値が変化していると考えられ,基盤構造を反映している可能性がある。したがって,この傾向面を除去すると基盤深度に関する情報も失う可能性があるので,基盤深度の推定には,傾向面を除去していない通常のブーゲ重力異常を用いることとした。

ウ ブーゲー重力異常とコントロール点における基盤深度@との関係

コントロール点における基盤深度情報に基づき,ブーゲー重力異常とコントロール点における基盤深度@との関係図を作成した(図7−2−4)。コントロール点は,反射法地震探査測線,微動アレー探査観測点,既存反射測線,既存ボーリングなどである。これらのデータに基づいて,ブーゲー異常と基盤深度の関係式を指数関数近似と線形近似の2通り算出した(図7−2−5)。ただし,平成14年度の地震探査測線の南部(高重力異常)での基盤深度,並びに西の里,野幌,輪厚の既存ボーリングのデータ(低重力異常帯)に関しては,次の理由から,重力異常と基盤深度の関係式の算出には利用していない。

・平成14年度地震探査測線南部の高重力異常は地表付近の火山岩の影響と考えられ,本解析の前提条件(基盤の上には堆積層が存在)を満たしていないと考えられる。

・西の里,野幌,輪厚のボーリングについては,本地域の地震基盤と見なす定山渓層群に達していないこと,並びに札幌市南東部の低重力異常帯に位置し,基盤深度と重力異常との関係が札幌市中央部と大きく異なると推定される。

ブーゲー重力異常と基盤標高との関係式は,次のとおりである。

    ・線形型  : Y=0.0093X + 60.744   X:基盤標高(m) Y:ブーゲー重力異常(mgal)

    ・指数関数型: Y=92.098e0.0004X

ブーゲー平板による構造の近似が妥当な場合,密度差の生じる境界深度と重力異常は一次式で近似できる。また,その方法が一般的である。

本調査地域では,白石区東米里付近を中心とする鉢状の構造で低重力異常を生じ,構造も大きく変化しているため,線形近似よりも指数関数近似の方がコントロール点の基盤深度との相関が高いが,指数関数は極ローカルな低重力異常と基盤深度にコントロールされる要素が大きく,広範囲への外挿は線形近似よりも危険が大きいと考え,線形近似を採用することとした。

エ ブーゲー重力異常から線形近似式を用いて基盤深度Aを推定

上記ウで求めた線形近似式を用いて,ブーゲー重力異常から基盤深度Aを算出し,基盤等深度線図を作成した(図7−2−6)。

オ ブーゲー重力異常から推定した基盤深度Aとコントロール点の基盤深度@との差

基盤深度Aとコントロール点における基盤深度@との差の分布図(図7−2−7)を作成し,補正値とした。

カ 重力による基盤深度

上記オで求めた補正値をもとに,重力を考慮した最終的な基盤等深度線図を作成した(図7−2−8)。得られた基盤構造は基本的にコントロール点における基盤深度によるものであり,重力による基盤深度はコントロール点が粗な地域の内挿に寄与している(札幌市北東部など)。また,使用した重力データの格子点サイズは1kmであり,それ以下の短波長の変化はコントロール点のデータによらざるを得ない。単純なモデルに当てはまらない山側(火山岩の貫入など)の構造も,他の情報によって検討する必要がある(平成14年度の重力解析)。

キ 2次元重力モデリング

調査地域の中央部を東西方向に横断する断面で重力のフォワードモデリングを行い,基盤深度モデルの妥当性を検討した。モデリング断面位置を図7−2−9に,モデリング結果を図7−2−10に示す。

モデルは基盤を覆う堆積岩を当別層(西野層)の基底で2層に区分した。各層の密度値は基礎試錐「石狩湾」(石油公団,1995)の密度検層結果を参考に設定した。

また,モデル西端山地部の高重力異常は火山岩(貫入岩)の影響と考え,火山岩の分布図(図7−2−11)や平成14年度重力モデリング結果も参考にして,第2層の密度を2.40g/cmと低地側よりも高い値を仮定した。

モデル計算値は,観測値をほぼ満足する結果となった。ただし,断面東端では計算値が観測値よりも大きく,基盤の定山渓層群がモデルよりも深いと推定される。この付近では,平成16年度調査で地震探査が計画されており,その結果によっては基盤深度構造も変更になることが予想されるため,その時点で再度モデリングによる検討を行うこととする。