3−1 探査の概要

ア 目的

本調査地域の地下構造は,基盤を厚さ4000mあるいはそれ以上の堆積層が覆っていると想定される。このような大深度地下構造を把握するには,起震車(大型バイブロサイス車)を用いて,地震基盤の分布形状,深度及びそれを覆う堆積層の分布形状,深度,P波速度を求めることが可能な反射法地震探査が最適と判断し,実施した。

イ 調査位置

北区屯田町から白石区東米里にかけて約12kmの測線を設定し,起震車4台を震源とする反射法地震探査を実施した。測線東端付近において平成14年度測線と交差する。探査測線位置図を図3−1−1(20万分の1)及び図3−1−2(5万分の1)に示す。

ウ 反射法地震探査の概要

地表面での人工的な振動により発生した弾性波が,地下に伝播する途中で地層境界面に入射すると,そのエネルギーの一部が反射して地表に戻ってくる。このように反射波は異なった物性(弾性波速度,密度)をもつ地層の境界面で生じる。その強度(反射エネルギー)は,地層境界面での音響インピーダンス(弾性波速度と密度との積)の差から定義される反射係数に比例する。反射記録断面図上での連続した反射波(反射イベント)は,その反射波に沿って地層境界面が存在することを示唆している。このような反射波を地表面に敷設した受振器(小型地震計)で観測して,地下構造を解析する探査手法が反射法地震探査である(図3−1−3)。

エ 共通反射点(CDP)重合法

反射法地震探査では,1回の発震で生じる反射波を多数の受振点(マルチチャンネル)で測定する。図3−1−4に示すように,発震点間隔を受振点間隔の整数倍とすれば,発震点と受振点の中点の位置は,受振点間隔の1/2で,規則正しく並ぶことになる。このような中点を共通反射点と呼ぶ。共通反射点は,CMPあるいは伝統的にCDP(Common Depth Point)と呼ばれている。個々の測定データの発震点と受振点の組合せは,CDPとオフセット距離(発震点と受振点間の距離)としても表現できる。同一のCDPを構成する記録(トレース)の集合をCDPギャザーと呼ぶ。

CDPギャザーを構成するトレースは,反射波の経路は異なっていても,水平構造であれば地下の反射点位置は同一であり,その走時は(3.1)式(式3−1)の双曲線で近似できる。

VrmsはRMS速度と呼ばれ,地表から反射面までの一種の平均速度である。

この原理に基づき,経路の異なった反射波をその共通反射点位置での垂直走時に変換(NMO補正)して加算(重合)することにより,調査測線に沿った反射記録断面図を作成することができる。加算するデータの数を重合数と呼ぶ(図3−1−4は3重合の例だが,本調査では測線端部を除くと30重合以上,最大で50重合である)。このような手法を共通反射点重合法と呼ぶ。この手法は次のような利点を持つ。

@反射波の走時とそのオフセット距離から(3.1)式に基づき,速度解析によりRMS速度を計算し,垂直走時変換補正量(NMO補正量)や隣接する地層間の区間速度を求めることができる。

A異なった経路の反射波を重合することで,多重反射などの不要なイベントを消去して,S/Nを向上させることができる。