4−5−2 速度分布について

速度解析から得られた速度分布図(前掲,図4−4−6図4−4−7)の中で,4000m/s台までの同じような速度に注目すると,測線南端部からCDP700あるいはCDP800付近の範囲では,北に向かって緩く傾斜していくが,そこから測線北端部にかけては全体的にはほぼ水平に分布する傾向がある。ただし,測線両端部の速度解析の精度は,測定上の制約から低い。

解釈断面図の各層には,速度解析から得られたP波区間速度の内,反射面の分布状況から信頼できると判断した速度を記入した。全体的に横方向への変化は少なく,深さ方向への変化が大きい。同一層の中でも,深いところほど速度が大きくなっている。

例えば,当別層についてみると,深度700〜1100m付近に分布するCDP440では,2200〜2400m/sなのに対し,深度900〜1900m付近に分布するCDP320では,2500〜3000m/s,さらに北側の深度1000〜3000m付近に分布するところでは2800〜4000m/sの速度となっている。そのうち,4000m/sまたはこれに近い速度は,概ね深度2000m〜3000mで得られた値である。

西野層が分布すると解釈したCDP800〜1200付近の深度約200〜800mにおける速度は,CDP1000〜1200付近では2000〜3500m/s,そこから北へ向かうにつれて2000〜3100m/s,2000〜2800m/sと徐々に小さくなる傾向がみられ,火山岩を主体とする西野層から徐々に泥岩〜砂岩を主体とする当別層に移り変わっていく様子が速度分布に反映されていると考えられる。

望来層が分布する範囲の速度は,2300〜4000m/sであり,深くなるほど大きな値となる。

盤の沢層,厚田層及び奔須部都層が分布すると解釈した範囲には,3100〜4800m/sの速度が分布する。測線北端部の深部(深度3500〜4500m)については,明瞭な反射面がなく信頼できる速度が得られていない。

各層のP波速度の分布範囲をまとめて,以下に示す。

第四系(中期〜後期更新世)         1500〜2200m/s

第四系(材木沢層)               1800〜2800m/s

当別層                      2200〜4000m/s

西野層                      2000〜3500m/s

望来層                      2300〜4000m/s

盤の沢層・厚田層・奔須部都層,砥山層  3100〜4800m/s

これら各層のP波速度を,札幌地域で実施されたPS検層結果や基礎試錐「石狩湾」の音波検層結果と併せて表4−5−1に示す。速度解析から得られた当別層や望来層のP波速度上限値が,既存調査のそれよりもかなり大きいが,既存調査の分布深度と同じような深度では,ほぼ同じか比較的近い範囲になることから,この速度範囲の違いは,それぞれの層の分布深度の違いによるものと考えられる。