6−3−5 解析上の仮定と解析手順

地震動解析は,線形弾性系を縦方向に伝播するせん断波の応答計算(1次元多重反射理論)により行った。このとき,計算を単純化するための仮定として以下のような条件を設定した。

・各地層の剛性および減衰のひずみ依存はないものとし,線形解析を行った。

・地震動の解析はQ値(あるいは減衰定数h)には,周波数依存性があるものとされている(例えば,吉田・笹谷,2000)が,Q値の周波数依存は,f=1Hzを基本とし考慮しないこととした。

・各地層の物性値は,微動アレー探査(No.6観測点)の解析から得られた値とした。

解析の手順は以下のとおりである。

@ HKD180観測波の解析

HKD180で観測された加速度データを,積分によって速度データに変換した。なお,積分の結果生じたトレンドについては,単回帰直線を用いて除去した。さらに,線形内挿を行うことで100Hzのデータを80Hzに変換し,後のスペクトル比の算出に備えた。また,SH波に着目した解析を行うため,NS成分とEW成分のデータからTransverse成分(地震波の到来方向と直交する方向)への座標変換を行った。時間ウィンドウは,各観測波のS波の初動パルスのみを捉えるため5秒とし,この部分の波形に対してフーリエスペクトルを算出した。

A HSS観測波の解析

HSS観測波については,Transverse成分への座標変換を行った上で,フーリエスペクトルの算出および応答計算を実施した。このときの時間ウィンドウは,フーリエスペクトルの計算に対しては上記の理由から5秒,応答計算に対してはS波初動から5秒以上の波形を得るために10秒とした。

B HKD180観測点における地盤増幅特性の計算

HKD180観測点における地盤の増幅特性を把握するために,微動アレー探査観測点No.6のS波速度構造を用いて伝達関数を求めた。

C HSS観測波とHKD180観測波のスペクトル比の計算

HSS観測波とHKD180観測波のフーリエスペクトルの計算結果を用いてスペクトル比を求めた。

D 地震応答計算

HSS観測波を地震基盤への入力波形として応答計算を実施した。なお応答計算には,微動アレー探査No.6観測点のS波速度構造を用いた。

応答計算に用いた各地層の物性値を表6−4に,解析の手順を図6−12に示す。

表6−4 解析に用いた各地層の物性値

図6−12 解析の手順