5−4 解析

この重力データをもとに,微動アレー探査観測点No.4,No.7,No.8,No.9およびNo.13を結ぶ断面とほぼ同様な位置において,地下構造の検討を行った。検討位置(断面線)を図5−1に,解析結果を図5−2図5−3図5−4図5−5図5−6に示す。解析結果各図において,下が地質モデル,上がブーゲー異常図である。ブーゲー異常図では,緑線が観測ブーゲー異常値,赤線がモデルから計算された理論ブーゲー異常値を示す。地質モデル各層の密度は,石油公団基礎試錐「石狩湾」密度検層の値を参考に設定した。解析の結果,以下の事がわかった。

@単純に重力2次元解析を行った結果では,ブーゲー異常の観測値と計算値が一致せず(図5−2図5−3),観測値と計算値を一致させるように解析すると,「基盤岩」に相当する密度2.60の地層が,琴似付近で地表直下に分布することになり,想定されている地質構造と一致しない(図5−4)。

A微動アレー探査結果から推定される断面図を基に重力解析を行った結果では,断面西側を除いてブーゲー異常の観測値と計算値が比較的よく一致する(図5−5)。

B図5−5の地質モデルの東側を一部修正して,解析を行ったところ,断面西側でブーゲー異常の観測値と計算値が合わないのはAと同じであるが,東側では,若干,観測値と計算値との不一致の度合いがAより大きくなった(図5−6)。

ブーゲー異常の観測値と計算値の不一致が見られる断面西側は,微動アレー探査結果と地質断面図でも不一致が見られる。これらの推定モデルに関する検討の他に,札幌市域でブーゲー異常から基盤の深度や形状の概略を把握するための解析方法も検討する必要がある。今回の解析結果からは,ブーゲー異常値に基盤の形状とは無関係な大きなトレンド(超深部の影響)が含まれている可能性が高いことも考えられるので,傾向面解析による補正処理も検討する必要がある。その際には,次年度以降予定されている追加微動アレー探査,反射法地震探査結果等と合わせて,検討する必要がある。