3−3−4 作業手順

図3−3に作業手順を示す。事前準備として,都市現況図(1/5,000)より観測点(地震計設置点)の予備設定を図上で行い,それをもとに観測場所の下見によって設置場所の確保,ノイズ源の有無などを確認する。実際には三重正三角形の頂点となる位置に,地震計を設置することが困難な場合や,その位置が交通ノイズなどのために観測上不利となる場合がある。そのような場合には,配置点を中心としてアレー中心との距離に対して5%の円内(誤差円と呼んでいる)で,できるだけ観測に支障のない場所を選定した。

地震計の設置点が私有地の場合は,所有者の許可を求めた。また,公道を使用する場合には,あらかじめ道路を管轄する各警察署から道路使用許可を得た。さらに公園,河川堤防などを使用する場合には,各土木事務所,河川局などから許可を得た。

観測は各点独立記録方式を採用し,地震計1台ごとに記録器を設置して微動データを収録した。観測に際しては,地震計の水平を保ち,かつ地面とのカップリングが良好になるように注意した。地面が柔らかい場合には木製のスペーサを使用した。

観測スケジュールはあらかじめパーソナルコンピュータにより各記録器に対して設定しておき,自動観測とした。観測は10台の観測機器が同時に動作するように設定した。さらに観測前後にGPSによる時刻校正を行い,観測開始時刻と終了時刻との確認を行った。

調査開始前に,使用する機器すべてを近接設置し,5分程度,微動の同時観測を行い,全機器のキャリブレーション(ハドルテスト)を行った。具体的には,コヒーレンスを求めることにより,使用機器の特性に対する一致の度合いをチェックした。図3−4にハドルテスト結果例(11月22日の観測初日に実施したもの)を示す。この図では,パワースペクトル,パワースペクトル比(地震計番号1番の地震計におけるパワースペクトルを基準として,他の地震計のパワースペクトルとの比率を求めたもの),コヒーレンス(位相特性の一致の度合いを表す指標で完全に一致していれば1.0を示す。1.0に近いほど一致の度合いは良い),位相差(地震計番号1番の地震計における位相スペクトルを基準として,他の地震計の位相スペクトルとの角度差を求めたもの)を表示してある。パワースペクトル,パワースペクトル比を調べることにより,各地震計における振幅特性の一致の度合いを確認することができる。パワースペクトル図を見ると、各地震計のパワースペクトルは,ほぼ一致していると考えられる。さらに,パワースペクトル比図では,パワースペクトル比が0.1〜10Hzの間で0.9〜1.1以内を示しており解析上特に問題とはならないと判断される。コヒーレンス,位相差は解析上特に重要な特性で,コヒーレンス図,位相差図により,各地震計における,これらの特性の一致の度合いを確認することができる。コヒーレンスについては周波数5Hz以下で0.99以上,5〜10Hzの範囲で0.9以上が得られている。また,位相差は周波数5Hz以下で±3゚以内,5〜10Hzの範囲で±5゚以内である。これにより,解析上これらの特性には問題がないと判断される。

観測は,ノイズの少ない夜間に行った。夜間における安全を確保するために,測定装置の周りをセーフティーコーンと通しバーで囲んだ。また,測定中は,照明で測定装置を照らし,監視員を配置した。通常の観測時間は120分とし,データのサンプリングは100Hzとした。

図3−3 作業手順