3−3−2 アレーの形状およびアレーサイズ

観測点は,微動アレー探査法の1つ,空間自己相関法を適用する場合には円形アレーを構成するように配置することが望ましい。正三角形アレーは,それを満たす1つのアレーである。図3−2に示すように今回は三重正三角形アレーとし,その各頂点および中心点の計10ヶ所(●印)に地震計を設置した。具体的には,観測地点を中心とした同心円上に配置できるような場所を探した。すなわち,構造物や立入禁止場所および水上の場所などを避けるように三重正三角形の中心を軸として回転させ,裸地やアスファルト道路,コンクリート舗装の場所を探し出した。前述した条件を10点全て満たすような場所を選びアレーを構成した。F−k法で解析する場合には,任意の形のアレーで取得したデータでも解析することは可能であるが,今回は,空間自己相関法の際と同じ正三角形アレーとした。それは,解析方法の評価をする際には同じ条件で取得されたデータを用いるのが好ましいこと。また,f−kパワースペクトルには,一般にアレーの形と大きさで決まるアレーの特性(アレーレスポンス)が重みとして入っておりその影響を少なくするには正三角形アレーが最もふさわしい(岡田,1989)ためである。

アレーサイズ(アレー中心点と正三角形の頂点との距離)は解析できる表面波の波長に関係する。しかし,どの波長の表面波を解析するかは探査地域の地下構造に依存する。あらかじめ,それを定量的に見積もることはできない。

そのため,調査地域に既存資料がある場合には,それを参照してS波速度構造モデルを推定し,レイリー波基本モードの位相速度を試算する。これより,最適な周波数範囲をカバーするようなアレーサイズを見積もる。残念ながら石狩平野北部地域では,文献調査の結果S波速度構造モデルを推定できるほどの既存資料がなく,構造も複雑であることが予想されるため,このような手段に頼ることは難しい。過去に行われた微動アレー探査結果によると,この地域では,大学,または大学と民間企業との共同研究により,過去,微動アレー探査が行われ,一部地下構造推定が行われている(例えば,笹谷ほか,2001)。笹谷ほか(2001)の場合,最大アレー半径は2,000mに設定され,低周波数側では0.2〜0.3Hz程度まで,また,最小アレー半径は約100mに設定され,高周波数側が2Hz程度まで,その間の周波数について位相速度が求められ,それらを基に,ほぼ3,000mまでの地下構造が推定されている。また,他の地域における地下構造調査においても,例えば千葉県では,アレーサイズを100〜2,000mとし,その結果,深度2,000〜3,000mの基盤構造が推定されている(千葉県,1998)。それらを参照し,本調査ではアレーサイズを100〜2,000m程度に見積もった。なお,そのアレー半径の範囲内を十分カバーできるように1観測地点に対して小アレー(アレー半径100,200,400mの三重正三角形アレー),および大アレー(アレー半径500,1,000,2,000mの三重正三角形アレー)の2種類のアレーを計画した。

図3−2 微動アレー探査,地震計配置図