2−6 ボーリングデータ

調査地域の周辺部を含め,既存のボーリングデータを収集した結果,調査地域に分布する地層および地質構造の検討に資し得る公表データとして,合計43孔のボーリングデータを抽出した。これら抽出した既存ボーリングの掘削年,掘削孔底深度,孔底層準,出典報告書名などの一覧を表2−12−1表2−12−2表2−12−3に示す。また,調査地域近傍の既存ボーリング孔(32孔)の位置図を図2−31に,一覧を表2−13に示す。

収集したボーリングの掘削目的別内訳は以下のとおりである。

石油公団基礎試錐      2孔(「南幌」、「石狩湾」)

石油探査ボーリング     21孔

温泉開発ボーリング     12孔

地震観測用ボーリング   7孔(札幌市3孔、北海道大学1孔)

天然ガス探査ボーリング  1孔

ボーリングの掘削孔底深度別の内訳は以下のとおりである。

1,000m以浅     11孔

1,000〜2,000m   15孔

2,000〜3,000m   7孔

3,000m以深     10孔

また,ボーリングの確認孔底層準別の内訳は以下のとおりである。

第四紀〜新第三紀鮮新世地層(西野層・当別層層準)    14孔

新第三紀後期中新世(望来層・盤ノ沢層層準)         11孔

新第三紀前〜中期中新世地層(厚田層〜定山渓層群層準) 15孔

先新第三紀地層                            3孔

これらのボーリングのうち,調査地域に分布する地層の構成,岩相,岩質,物性などを検討する上で最も参考となるボーリング孔としては,調査地域の北西方,石狩湾で平成6年に掘削された石油公団基礎試錐「石狩湾」があげられる。本ボーリングは,岩質上から調査地域の基盤岩と想定される地層に到達している大深度のボーリングであり,各種孔内物理検層や岩石試験などのデータが得られている。以下に,基礎試錐「石狩湾」で得られた地質状況について概略を示す。なお,物理検層関係については,(4)物理探査の項で記述した。

本ボーリングは,石狩新港の北西約7kmに位置し,新第三紀前期中新世の定山渓層群

相当層を確認し,深度3,800mまで掘削されている。逢着した地層は以下のとおりである。

24m(海底) 〜 753m 第四紀層

753m  〜 1,141m  当別層(鮮新世〜後期中新世)

1,141m 〜 1,499m  望来層(後期中新世)

1,499m 〜 2,483m  盤ノ沢〜厚田層 (中期中新世)

2,483m 〜 2,930m  奔須部都層(上部層)(中期中新世)

2,930m 〜 3,224m  奔須部都層(下部層)(中期中新世)

3,224m 〜 3,800m(孔底)  定山渓層群(前期中新世)

基礎試錐「石狩湾」坑井資料要約図を図2−32に示す。各層の岩相は以下のとおりである。

@第四紀層(24〜753m):F層

暗灰色〜明灰色の細粒〜極細粒砂岩を主とし,火山岩,凝灰岩,泥岩などからなる細〜中礫,帯黄褐灰色〜灰色の泥岩および白色の軽石を伴う。貝殻の砕片や炭質物が含まれている。

A当別層(753〜1,141m):E層

上部(753〜1,037m:E2層)は,明灰色〜暗灰色の細粒〜粗粒砂優勢の砂岩を主とし,オリーブ灰色〜暗灰色の泥岩,明灰色のシルト岩および暗灰色〜暗緑色の火山岩片の細〜中礫を伴う。

下部(1,037〜1,141m:E1層)は,緑灰色〜オリーブ灰色の泥岩を主とする。

B望来層(1,141〜1,499m):D層  

上部(1,141〜1,208m)は,明灰色,淡緑色の細粒〜粗粒砂岩を主とし,明灰色〜オリーブ灰色の泥岩および白色の軽石をはさむ。

下部(1,208〜1,499m)は,オリーブ灰色〜暗灰色の泥岩を主とし,明灰色〜淡緑色の細粒砂岩,帯褐灰色褐色のシルト岩および明灰色のマールを挟む。また,1,324〜1,333mの区間の泥岩は,海緑石を多く含む。

C盤ノ沢層〜厚田層(1,499〜2,483m):C層

上部(1,499〜2,030.5m:C3層)は,緑色〜灰色の細粒〜粗粒凝灰岩を主とし,暗灰色,暗赤色の安山岩のブロックを主体とする火山礫凝灰岩,凝灰角礫岩および火山角礫岩を伴う。まれに,オリーブ灰色の凝灰質泥岩を挟む。1,560〜2,030.5mは,安山岩質の凝灰角礫岩および火山角礫岩からなる。

中部(2,030.5〜2,361m:C2層)は,明灰色〜淡緑色の細粒凝灰岩を主とし,暗灰色,オリーブ灰色,濁緑色などの凝灰角礫岩,灰色の泥岩および暗灰色の極細粒〜細粒砂岩を伴う。

下部(2,361〜2,483m:C1層)は,緑灰色の極細粒〜細粒砂岩からなり,明灰色〜オリーブ灰色の細粒凝灰岩を伴う。

D奔須部都層(上部層)(2,483〜2,930m):B3・B2層

上部(2,483〜2,680m:B3層)は,オリーブ灰色〜明灰色の泥岩〜シルト岩を主とし,明灰色〜緑灰色の細粒〜中粒砂岩をわずかに伴う。2,500〜2,508mには貝化石が含まれる。

下部(2,680〜2,930m:B2層)は,濁緑色,白色,暗灰色,オリーブ灰色などの凝灰岩〜凝灰質泥岩を主とし,極細粒〜中粒砂岩,シルト岩,泥岩を挟む。わずかに凝灰角礫岩と石炭を伴う。最下部(2,850〜2.930m)は,砂岩およびシルト岩を主とし,凝灰質泥岩を伴う。

E奔須部都層(下部層)(2,930〜3,224m):B1層

最上部(2,930〜3,000m)は,火山岩片に富む緑灰色〜オリーブ灰色の極細粒〜粗粒砂岩を主とするが,3,000m以深では,明灰色の石英安山岩,暗灰色,淡緑色の安山岩および明灰色の流紋岩の細〜大礫からなる礫岩を主体とする。

F定山渓層群(3,224〜 3,800m):A層

上部(3,224〜3,476m:A2層)は,帯灰赤色,暗灰色,暗緑色の安山岩質凝灰角礫岩および緑灰色,帯灰黒色安山岩質溶岩からなる。

下部(3,476〜3,800m―孔底:A1層)は,暗灰色,帯灰赤色,暗緑色の安山岩質凝灰角礫岩・火山角礫岩および玄武岩質凝灰角礫岩・火山角礫岩を主体とし,褐灰色,青灰色,帯緑黒色の安山岩質および玄武岩質溶岩を挟む。

上述のように,基礎試錐「石狩湾」で確認された盤の沢層〜厚田層は,凝灰角礫岩および凝灰岩などからなる火山砕屑岩を主体とする。一方,札幌市地下に分布する盤の沢層〜厚田層は,砂岩・泥岩などからなる堆積岩を主体とすると推定されることから,石狩平野北部地域の地下での同層は,基礎試錐「石狩湾」のものより,やや遅いS波速度を有するものと判断される。