9 用語説明

●P波とS波(弾性波)

地震が発生するとき、震源で発生する地震波にはP波とS波の2種類がある。P波は縦波あるいは粗密波と呼ばれる波で、体積の変化を伝える波である(図9−1)。S波は横波あるいはせん断波と呼ばれる波で、体積は変化せず媒質の変形が伝わる波である(図9−2)。

 地震が発生して伝わってきた波のうち初期微動と呼ばれるものがP波、主要動と呼ばれているものがS波であり、それぞれPrimary(最初の)、Secondary(2番目の)に由来する。   

それぞれの波が地盤を伝わる速さを、P波速度及びS波速度といい、地盤が固いほどそれぞれの速度は速い。

●バイブロサイス

反射法探査及び屈折法探査で使用した大型バイブレーターは、図9−3(b)に示されるような振幅が一定で時間に応じて周波数が変化する振動を発生させる。バイブレーター震源を用いた探査で取得される現場記録は図9−3(f)に相当するものとなるが、この現場記録と図9−3(b)の入力波形の相互相関を求めることによって図9−3(g)のようにパルス状震源で取得した現場記録と同様な記録を得ることができる。

●反射波と屈折波 図9−4

右図のように、震源より発生した地震波は地層境界ではね返る反射及び地層境界を伝わる屈折という現象を起こして地表へ戻ってくる。平行2層構造の場合、震源の近くでは地表を伝わる直接波が最も早く到達するが、ある点を越えると地層境界を伝わる屈折波が先に到達するようになる。このような波の伝播速度経路によって到達時間が変わる性質を利用したものが屈折法探査である。一方、反射波は境界面の深さに応じて戻ってくるまでの時間が変化する。この性質を利用したものが反射法探査である。

●CMP

Common Mid Point(共通中間点)の略。中間点とは発振点と受振点の平面的な中間点を意味する。標準的な反射法の解析では、この中間点を共通とする波形データをひとまとめにして処理を行う。このため、解析結果である断面は、共通中間点毎に出力する波形データから構成され、共通中間点は、解析断面において、測線方向のサンプリング位置となる。

●デコンボリューション

反射法地震探査で収録対象とする波形記録は、単純化すると、探査対象である地下の特性と探査に使用する機器等の地下に起因しない特性がコンボリューション(日本語では重畳、畳み込みという)したものである。探査対象である地下の特性を得るために、それ以外の特性の影響を収録記録から取り除く処理を、上記コンボリューションに対して逆の処理という意味で、デコンボリューションという。

●トモグラフィ

投影データ等から内部の物性等の分布を断面図としてイメージする技術の総称である。医療分野において身体の断層写真を得るために一般に使われるX線CT(Computer Tomography)がこの技術の代表例である。

●NMO補正

反射法地震探査のデータ処理において、信号強度を高めるために多用されるCMP重合法に伴う補正である。反射法地震探査の測定では、振動を起こす発振点と振動を感知する受振点の間の距離(オフセットという)をいくとおりか変えてデータを収録する。NMO補正は、これらの様々なオフセットで収録したデータを、発振点と受振点が同一地点、すなわちゼロオフセットで収録したデータに変換する時間補正である。補正後、様々なオフセットで収録したデータを加算(重合)し、信号強度を高める。

●FKマイグレーション

反射法地震探査の解析断面等に示される反射面等を、正しい位置に戻すマイグレーション処理法のひとつである。処理を周波数−波数(frequency−wavenumber)領域で行うことからこの名称が用いられる。

●相対振幅表示

個々の振幅を、反射断面全体の振幅の最大値及び最小値に対する相対値で表示したもの。イベントの時間や空間的な強度変化が保存された表示法である。

●バリアブルエリア

波形表示方法のひとつ。時間変化する波形では、時間変化する振幅のうち、正(あるいは負)の振幅箇所を塗りつぶした表示となる。

例) 図9−5

●地質年代と絶対年代 図9−6

化石すなわち生物進化に基づいて定義された相対的な時代区分が地質年代であり、放射性元素などを利用して物理化学的に求めた数値が絶対年代である。

●丹波層群

三畳紀後期〜ジュラ紀の付加体堆積物で、頁岩・砂岩・チャートなどの固い堆積岩からなる。付加体とはプレート運動によりでき、海洋底の上にたまっていた堆積物が、大陸プレートの下に沈み込むときにはぎ取られて陸側へ押しつけられできたものである。

●大阪層群

新第三紀鮮新世後期〜第四紀更新世中期にかけて堆積した未固結の礫・砂・粘土などの堆積物よりなり、大阪平野周辺の丘陵地域に広く露出する地層である。粘土のなかには海にたまった暗灰色を呈する海成粘土と、湖などの陸域にたまった緑灰色を呈する淡水成粘土がある。一般に、淡水成粘土には青色が特徴的な藍鉄鉱が、海成粘土には硫化鉄が蓄積され、その後の環境変化により、硫化鉄は黄鉄鉱(二硫化鉄)や石膏(硫酸カルシウム)に変化する。

大阪層群の海成粘土は時代の古いものからMa0、Ma1、・・・・Ma10と呼ばれている。これらの海成粘土や火山灰などをもとに詳細な地質層序が組み立てられている。

●段丘堆積層

更新世の河川・湖や海の堆積作用によりできた地層で、段丘や台地面を形成する。主に礫、砂、泥からなり、成因がちがうとその比率も変わる。時代の古い方からさらに、高位段丘堆積層、中位段丘堆積層、低位段丘堆積層に区分される。

●沖積層

現在の河川や海の働き(堆積作用)により形成された地層で、最も新しい地層のこと。この地層は最終氷期と呼ばれる寒冷期に、海水面が大きく低下した約18000年前以降に形成され、主に固まっていない泥、砂、礫などからなり、低地(沖積平野)を形成する。

●断層と撓曲

地層や岩石などが、一つの面を境にしてくいちがってずれた現象を断層という。しかし、硬い岩盤が断層でずれていても、その上の地層があまり固まっていない場合などには、地層はくいちがいを起こさず撓んだ形となり、これを専門的には撓曲と呼ぶ。