2−4 調査地域の選定とその経緯の概要

平成16年度における調査地域の選定は、平成15年度までと同様に、大阪平野全域の地質構造特性を概観するとともに、人口集中度などの社会的特性などを踏まえて行った。以下に、その経緯の概要をまとめる。

大阪平野を対象とする地下構造調査における重点調査候補地域について、平野の深部地質構造の特徴を踏まえて以下の3地域に分けて検討する。

・ 大阪平野北部・・・・・豊中市、吹田市、茨木市、高槻市、枚方市、交野市及び以北の地域(人口約210万人)

・ 大阪平野中央部・・・上記以南で、大阪市、東大阪市、八尾市など大和川以北の地域(人口約410万人)

・ 大阪平野南部・・・・・堺市、岸和田市など大和川以南の地域(人口約240万人)

<大阪平野北部>

豊中市から枚方市にかけての大阪平野北部は、南北方向の上町・生駒断層と東西性の有馬高槻断層帯が交差する地域のため、地下構造は複雑と推定される。この地域の中で、豊中市、吹田市、茨木市すなわち千里丘陵及びその西側は、基盤岩に達する温泉ボーリングも多く、表層地質による研究が十分になされており、バイブロサイスによる反射法探査も実施されており、調査データが比較的多いため、とくに新たな調査を行う必要はないと考えられる。これに対して、高槻市から枚方市にかけては、重力探査の結果では基盤岩深度が1000mを超える地域が多いと推定されているが、地下構造はほとんど未解明であり地下構造調査の重点地域のひとつと考えられる。

<大阪平野中央部>

大阪市・東大阪市・八尾市などを含む大阪平野中央部は、最も人口が集中する地域であるが、比較的既存資料が多いため地下構造の概略は把握されている。すなわち、この地域は上町断層により形成された南北に伸びる地下山脈状の上町台地により東西の平野に分けられ、西側の大阪湾岸部の基盤岩深度は1500m程度、東側の東大阪平野の基盤岩最深部は1600m以上と推定されている。この地域の地震動を予測する上でまず把握する必要のある地下構造は、東大阪平野から生駒断層にいたる基盤岩の形状である。兵庫県南部地震において「震災の帯」の原因と考えられている地下の基盤岩の段差構造が、この生駒断層の縁辺部でも存在すると推定される。

<大阪平野南部>

この地域は大和川流域及び湾岸部に人口が集中しているが、上町断層近傍を除くと地質情報が少ない地域である。唯一の広域地質情報は重力探査結果であるが、それによるとこの地域には重力異常値の高い目玉状の部分が、JR堺市駅東側と堺泉北港の2ヶ所に認められる。しかし、その地質構造についての明確な解釈は行われていない。また、この地域において解明すべき地質構造上の問題点としては、地質調査所が堺市浜寺付近で実施した反射法探査(堺第2測線)において上町断層のさらに西側に見られた撓曲構造や上町断層の南端、さらには誉田断層と生駒断層の関係と周辺の地質構造などが挙げられる。

以上にまとめた大阪平野における地質構造特性、人口集中度などの社会的特性及び反射法地震探査が実施可能と推定される道路条件(道路幅員、交通状況等)などを踏まえて、図2−8表2−5に示すような平野全域を対象とした全体調査計画案を想定した。

図2−8 大阪平野地下構造調査の全体調査計画案

表2−5 全体調査計画案一覧表

図2−9に示す大阪平野及び周辺地域における反射法探査やボーリング調査などの既存資料の分布状況や、前述の全体計画と平成15年度に実施した反射法探査結果などを踏まえれば、現時点での大阪平野における重点調査候補地域は平野の中央部地域である。とくに、八尾地域は重力により基盤岩深度が平野内で最深部であることが予想されること、南部地域と連続するように調査測線を配置することは広域的な地盤モデルを構築する上で重要と考えられる。また、湾岸第2測線に見られた基盤岩の落差とその延長方向を確認することも重要なことと考えられる。

以上より、平成16年度における調査対象地域として、大阪平野中央部地域で図2−9に示すように東大阪測線に代わる八尾測線と大阪湾岸第1測線および堺築港東西測線において反射法地震探査を実施した。

図2−9 大阪平野及び周辺地域におけるおもな既存資料分布図