1−6  調査結果の概要

(1)既存資料の収集・整理では、平成14年度に収集・整理したデータを補うため、おもに平成15年度において新たに公表されたデータを追加してとりまとめた。これらの既存資料と平成14年度における反射法探査結果を踏まえて、大阪平野における地質構造及び地盤物性値に関する特性を把握するとともに、大阪平野の3次元モデリングに際して問題となる地域を抽出し、地下構造調査の計画を策定するための基礎資料とした。これより、平成15年度における調査対象地域は、大阪平野の中でも地質情報の希薄な地域であるとともに、既存の重力探査データ等より推定される基盤岩の深度分布に不整形構造があるとされる大和川南部地域および大阪湾岸地域を対象として、P波による反射法地震探査を実施した。

(2)P波による反射法地震探査は、上町断層や生駒断層南部などの地質構造を対象として大和川南部地域をほぼ東西に横断する大和川南測線(18km)と、大阪湾岸部における基盤岩構造の解明のための大阪湾岸第2測線(9km)の2測線を設定して、総延長約27kmにおいて実施した。その結果、大和川南測線における探査結果より、上町断層や生駒断層の南方延長部における断層構造が確認され、基盤岩の最深部は測線西端部の上町断層下盤側で約1400mであることが明らかとなり、上町断層の鉛直落差は約400mと推定された。測線の東部においては、反射記録があまり明瞭でないが、生駒断層の南方延長部の地質構造に関して、誉田断層の鉛直落差が600m以上あることが推定され、この地域においては、生駒断層帯の鉛直落差は、生駒断層の南方延長部よりもその西側において大きいことが示唆された。また、重力探査結果より推定されていた大和川南部における単独丘状の重力異常域は、主として上町断層によって形成された基盤岩の隆起構造であることが明らかとなり、その基盤岩の最浅部における深度は約1100mと推定された。さらに、同じ測線において実施した屈折法探査より、この地域の基盤岩P波速度は5.5〜6.5km/secと推定され、中川ほか(1989)などの探査結果よりやや速い値が得られた。

一方、大阪湾岸第2測線における探査結果より、重力探査より推定されていた基盤岩の小丘状の構造が確認され、上位の堆積層にも継続的な変形の見られることが明らかとなった。また、測線北部においては、北上がりの断層が推定され、地盤の表層部においても地層が連続していない可能性のあることが指摘された。

(3)総合解析では、反射法地震探査で得られた各測線の時間断面及び深度断面における反射記録の特徴をもとにして反射波の対比を行い、深層ボーリングなどの既存資料をもとに各2測線の地質層序を推定し、大阪層群の海成粘土層(Ma3〜Ma9)の分布を推定した。また、平成14年度における探査結果とあわせて既存の重力探査結果によって推定されていた基盤岩構造を再検討し、あらたに大阪平野全域を対象とした基盤岩深度分布について検討を加えた。さらに、これまでに得られた地質情報を総括し、既存の大阪平野における3次元地盤モデルの改良を行うとともに、3次元シミュレーションの実施によってモデルの検証を行い、その問題点を抽出し、今後のモデル改良に対する基礎資料とした。