調査地域全体の基盤深度(第5層上面深度)の把握に関しては、各種調査(深層ボーリング、反射法地震探査、微動アレー探査)から深度が得られている箇所の間を補完するために重力データを用いた。
本調査地域の重力探査データは、地質調査所発行「山形地域重力異常図(ブーゲ異常図)」(1991)としてまとめられている。平成15年度調査では、この重力異常図の全ブーゲ異常値を数値化し、二次傾向面を求めた後、それを全ブーゲ異常値から取り除くことにより二次残差ブーゲ異常値を得た。図4.1.3.1に調査地域周辺の二次残差ブーゲー異常図を示す。
重力データの解析では、各種調査によって第5層上面標高が得られている地点と同位置における二次残差ブーゲ異常値との相関関係を把握するための回帰分析を行った。
図4.1.3.2は、深層ボーリングや反射法地震探査から得られた第5層上面標高と、その位置における二次残差ブーゲー異常値をプロットしたものである。第5層上面の標高値は、反射法地震探査データ各測線の解釈結果から500m間隔で読み取った。図4.1.3.2中の多角形で囲んだ部分は、調査地域南部の名取市、岩沼市を含む地域で、二次残差ブーゲ異状の低重力異常が示された範囲である。この地域の第5層上面標高と二次残差ブーゲー異常値は、明らかに他の地点のデータと異なったグループに属しているため、回帰分析には使用していない。この範囲の第5層上面標高については、比較的高密度に実施されている反射法地震探査結果(SK87−2測線〜SK87−5測線)に加え、微動アレー探査結果及び非公開のボーリングデータから求めることにした。多角形で囲まれた範囲のデータを除いて求めた二次残差ブーゲー異常と第5層上面標高の関係式は、各種調査の密度が粗い地域におけるデータ内挿時に用いることにした。
回帰分析の結果、第5上面標高(H)と二次残差ブーゲー異常(BG)との間には、次式で示す相関があることが分かった(図4.1.3.2に示した赤点線)。
H = 39.5 × BG−780 (相関係数:0.847)
調査地域南部を除けばブーゲ異常値と基盤標高との間には、比較的良好な相関関係が認められることから、以下に示す手順(図4.1.3.3参照)により、第5層上面標高分布を求めた。
各種調査(深層ボーリング、反射法地震探査、微動アレー探査)の結果から求めた第5層上面標高を基準点として扱い、これらをコントロールポイントとした。
第5層上面標高(H)とブーゲ異常(BG)との関係は、回帰分析結果である1次式:
H = 39.5 × BG−780
で近似できるものとした。この相関式から求めた第5層上面標高を重力換算基盤標高と呼ぶこととする。この段階では、この計算値と
のコントロールポイントでの第5層上面標高との間には差異がある。
各コントロールポイントでの第5層上面標高と
の1次式で推定された第5層上面標高との差を求め、その平面分布を求める。これを標高残差と呼ぶこととする。
250mメッシュの各グリッド点における重力換算基盤標高に標高残差を加えることにより、各コントロールポイントにおける第5層上面標高が観測値に等しくなるとともに、コントロールポイント間の第5層上面標高は、重力データを反映したものになる(図4.1.3.4)。
上記手順で作成した重力換算基盤標高を図4.1.3.5に、これにコントロールポイントとクリギングによる標高残差を用いて補正したものを図4.1.3.6に示す。なお、コントロールポイントには、地質図で基盤が露頭している箇所も含めている。
本解析結果は、相関の傾向が異なる調査地域南部を除く調査地域のうち、物理探査を実施できなかった調査地域山間部において、第5層上面標高の推定に用いることが可能であると考えられる。しかし、この方法で推定した第5層上面標高には、図4.1.3.2に示した赤点線とコントロールデータとの差から分かるように、相関解析における残差に、大きいところでは200m程度の誤差を含むことが見込まれることを考慮する必要がある。また、図4.1.3.6では、既知の地質情報である高館ハーフグラーベンや小豆島とう曲などが表現できていない。これは、重力データの測定密度やその他の調査から得られるコントロールポイントの不足及びメッシュサイズ等に起因するものである。今後の調査で明らかになるであろうコントロールデータの追加と、構造急変箇所のメッシュサイズの極小化により表現できると期待される。