本調査では位相速度の推定方法として、分解能の高い「空間自己相関法」を採用した。
いま、アレー半径rの円形アレーに、周波数f、位相速度C(f)の微動が平面波として入射する場合を考える。アレー中心とアレー円周上間の微動の相関係数をアレー円周に沿って積分平均した値(空間自己相関関数)をh(f,r)、アレー中心での微動のパワースペクトルをg(f)とするとき、これらの値の比ρ(f,r)=h(f,r)/g(f)を空間自己相関係数という。
位相速度C(f)と空間自己相関係数ρ(f,r)とは、次の方程式を満足する(Okada, 2003)。
ρ(f,r)=J0[2πfr/C(f)]
上式右辺のJ0[*]は、第一種0次ベッセル関数である。また、rは観測時に設定可能なパラメータ、f及びρ(f,r)は観測データから決まるパラメータである。したがって、上式を用いて位相速度 C(f)を求めることができる。
以上のように、空間自己相関係数を用いて位相速度を推定する方法を「空間自己相関法」という。観測微動データから位相速度を推定する手順を、図3.2.4.1に示す。