(2)データ取得作業

1)調査測線概況

測線は、青葉区荒巻を起点とし(北西端を受振点番号1(RP1)とする)、若林区日辺(受振点番号597(RP597))に至る国道、各市町村道、農道、広瀬川河川敷に沿って設定した。測線には車両の通行ノイズの激しい場所が含まれたが、できるだけ路地裏などに受振器ラインを迂回することでデータ品質の低下を抑制した。各受振点についての周辺環境、ノイズレベル、受振器設置状況については以下のとおりである。

RP1からRP30までの区間は青葉区荒巻の砂利道(私道)にあたる。民家は少ないが、所々道路上に露岩が見られ、その箇所では発震が不可能であった。なおこの区間は、H13年度に行われた地震予知総合研究振興会(2002)によるH13−LINE−A測線の南東端とオーバーラップしている。

RP31からRP87までの区間は、青葉区国見6丁目からJR仙山線の国見駅を跨ぎ、弘法山の急斜面を下り、八幡6丁目に至る区間である。この区域では民家が密集しており、道幅も狭いため、発震点の確保が非常に困難であった。

RP88からRP100までは、八幡6丁目で国道48号線を横断することや広瀬川に下る急斜面、および広瀬川の横断箇所となるが、ケーブル設置が困難なため、この区間についてはdeadとしている。なおRP1〜RP87までの区間、すなわち測線の北西端については、広瀬川での有線ケーブルの横断が難しいため、独立型レコーダー(MS−2000)を使用した。

RP101からRP172までの区間は、広瀬川河川敷の牛越緑地公園から牛越橋を渡り、広瀬川左岸の土手沿いの遊歩道をとおり、澱橋に至る区間である。大半が河川敷沿いの遊歩道を通るため、交通量は少なくノイズレベルは低いものの、牛越緑地公園を除いては、発震箇所の確保が難しい区間であった。

キRP173からRP224までの区間は、澱橋から川内の県美術館やスポーツセンターの横を通過し、大橋に至る区間である。交通量が非常に激しいものの、道幅が広いため、ある程度均等に発震をすることができた。また受振器は歩道上の植樹帯に設置した。

キRP225からRP320までの区間は、大橋を渡った広瀬川左岸の大手町、花壇地区の河川敷および住宅街を通過する。その後、評定河原橋を渡り、右岸の遊歩道を通り、霊屋橋を渡って、左岸の遊歩道沿いに米ヶ袋3丁目で広瀬川を横断するまでの区間である。大半が河川敷沿いの遊歩道を通るため、交通量は少なく、ノイズレベルは低いものの、発震箇所の確保が非常に難しく、付近の道幅の広い舗装道路上で数点オフセット発震点を設けた。

RP321からRP400までの区間は、受振点については広瀬川右岸の愛宕緑地から河川敷沿いに至る。発震点については、交通量の非常に多い、広瀬川河畔通沿上の舗装道路である。この付近から南東側については、長町−利府断層が通過する区間にあたるため、発震を密に行った。

RP401からRP530までの区間は、受振点、発震点ともに広瀬川河川敷である。作業効率も上がり、民家が近い区間を除くとほとんどの箇所で予定通りの発震が可能であった。

RP531からRP597までの区間は、広瀬大橋で左岸に渡り、土手上に受振点を設け、発震は土手下の農道上に設定した。測線の南東端の約20点は河川敷内の農道となっている。

2)測定作業

@概要および工程

予想される基盤深度が1 〜2 km位であることから、発震点から受振点までの最大オフセット距離3 km(標準)で反射記録を取得した。本調査の測定仕様は表3−2−1−1に、現地調査の作業実績工程は表3−2−1−2に示した。また発震点位置と受振点位置の関係を示す展開表を資料5に、受振点の受振器設置状況を資料6にそれぞれ示す。

観測作業は、北西から南東の方向で実施した。観測作業終了後、受振器等の撤収および全資機材の集結・搬出作業、関係各署への終了報告等を行った後、作業場を閉鎖して全員離場した。

資料7に現場写真、資料8に現場データシートをそれぞれ添付する。

A本観測仕様

本観測に先だって以下の項目のパラメータテストを実施した。

・バイブレータスイープ周波数テスト: 8〜80Hz,8〜60Hz,8〜50Hz,12〜

60Hz、Stack 10回、バイブレータ3台、固定発震

・スタック回数テスト: 1,3,5,10,15,20回

資料9に各テストの発震記録を示す。テスト結果に基づいて、反射法地震探査における測定仕様を以下の様に決定した。

<発震系>

 震源(バイブレータ) :Y−2400 3台(標準)

 発震点間隔 :100 m(標準)

  バイブレータ移動量 :1.4 m(標準)

 スイープ回数/VP :5〜25 回

 スイープ長 :16 sec

 スイープ周波数 :8〜60 Hz(リニア)

 位相制御方式 :Ground Force Phase Lock

 ドライブレベル :90 %(標準)

<受振系>

 受振点間隔 :25 m

 受振器     :SM−7(f0=10Hz)

 受振器数/受振点 :9 個(3 series×3 parallel)

 受振器配列 :1.4 m × 9 個(直線配列)

<記録系>

 探鉱機型式 :G・DAPS−4ディジタルテレメトリ

およびMS2000独立型レコーダ

 チャンネル数 :240 チャンネル

 展開法     :split−spread(振り分け展開)

 録音記録長 :5,12,16 sec(垂直重合、クロスコリレーション後)

(当初5sec記録としていたが、深部反射を取得することも考慮し、途中16secとした。最終的には12secの記録長となった)

 サンプリング間隔 :4 msec

 フィルター Low Cut :OUT

  High Cut :108Hz

 ノッチフィルター :OUT

 プリアンプゲイン :24 dB

 コリレーション・タイプ :C.B.S (Correlation before Stack)

B受振器設置作業

「調査測線概況」でも述べたように、舗装道路については、受振器は歩道の車道側植込み等を利用して、できるだけ地面に設置するようにした。受振点位置が交差点や三叉路の中にあたる場合は、正規間隔で設置せず、受振点位置を近くの歩道側にずらした。一部の歩道沿いでは、植込みが飛び飛びになっているため、「アルミ製受振器スタンド」を使用して設置した。また路肩がコンクリートで固められている箇所もスタンド設置となっている。交差点・三叉路付近、停留所・商店出入り口等で歩行の障害となるところでは、受振器を固めて設置する「バンチング」を併用した。

調査測線と交差する道路が多数あり、特に交通量の多い幹線道路での本線ケーブルの道路横断には、信号柱を利用して高架渡しを行った。この他の交差点では交通量に応じて、ケーブルをゴム製のカバーで覆って道路面を横断するか、ケーブルをガムテープで固定した。なおRP189, 221,248は交差点や歩行の障害となるため、RP123〜124、175〜176、225〜226、262〜265、287〜289、319〜320、533〜534は広瀬川横断箇所のためdead channelとなっている。

C主要機材

使用した主要機材は、次の通りである。

バイブレータ :BW MK−IV(Y−2400) 2台

:HEMI−50 1台

探鉱機 :G・DAPS−4ディジタルテレメトリ 1式

:独立型レコーダ(MS2000D) 17式

プロッタ  :GS−622  1式

RSU :Remote Station Unit 85台

バッテリ :           250台

DTCL : 75本

チャージャー :CG−01、DC−1 6台

受振器 :SM−7(f0=10Hz) 600組(9個/組)

車両 :観測車等       8台

無線機 :10W/1W      1式

D観測結果

測線のノイズ状況を図3−2−1−5に示す。時間的、空間的にノイズ環境が大きく異なる。特にRP180〜224の澱橋から川内の県美術館やスポーツセンター付近の幹線道路沿いの区間がノイズレベルが大きくなっている。またRP380〜RP400の区間は交通量の非常に多い広瀬川河畔通が近いため、平日はノイズが大きかった。ノイズレベルは平均して−84dB程度であり、ノイズの大きい場所との差は24dB以上にもなることがあった。

図3−2−1−6−1図3−2−1−6−2図3−2−1−6−3図3−2−1−6−4図3−2−1−6−5図3−2−1−6−6図3−2−1−6−7図3−2−1−6−8に、反射法地震探査の現場モニター記録例を示す。図では、人工震源(バイブロサイス)から生成された弾性波を、地表に設置した240カ所の受振点で同時に観測した波形を並べて表示してある。横軸は受振点位置、縦軸は弾性波の到達時間(往復走時時間、秒)に相当する。参考のために、5万分の1の地形図上に発震点・受振点をマークした測線図を対比した。

記録例では、表層基底層を伝播した初動屈折波(直線的な波の並び)、およびその下の層の境界を伝播した初動屈折波が確認できる。初動屈折波は240チャンネルの展開全域にわたって観測されているが、発震点からの距離が大きい区間では初動が不明瞭になっている。

3)測量作業

調査測線の受振点・発震点の杭の測設ならびに、そのXY座標、標高等を測定するための測量は以下に示すように実施した。

@基準点測量

国家三角点を与点しRTK−GPS 測量の基準点観測を行ない、基準点を設置した。

A測線測量

作業で使用する道路(作業路線)の路肩に、計画された間隔でエスロンテープを使用して、受振点及び発震点の位置を木杭または白チョークで表示した。

B多角測量

障害物などにより、RTK−GPS測量で観測できない作業路線については、RTK−GPS測量の放射法を行ない、RTK−GPS点を設置した。

C細部測量

新設基準点を与点として、RTK−GPS測量の放射法を行ない、受振点と発震点の位置を測量した。また、障害物などにより、RTK−GPS測量で観測できない受振点と発震点については、RTK−GPS点を与点として、多角測量の放射方式を行ない、受振点及び発震点の位置を測量した。

D水準測量

細部測量と同時に実施した。

E使用基準点

本作業で使用した国家三角点を以下に記す。

 点 名 等級 1/5万地形図名

 岩切 四等三角点 仙台

 高柳   〃 鰍沢

F測地諸元

本作業で使用した測地諸元を以下に記す。

 準拠楕円体 GRS80

 長半径 6,378,137.000m

 短半径 6,356,752.314m

 投影法 TM図法

 座標系 平面直角座標第10系

 座標原点 緯度 40゜ 0’0”N

  〃 経度 140゜50’0”E

 縮尺係数 0.9999

 北方加数 0.0m

 東方加数 0.0m

発震点・受振点の座標・標高値を資料10に示す。

4)反射法データ解析

@反射法データ解析の概要

現地調査で取得された反射法探査データは、IBM RS/6000 SP (AIX Ver.4.2)とSuperX反射法地震探査解析ソフトウェアを用いて解析した。

解析作業は、屈折初動解析による表層構造の解析、重合速度を得るための速度解析などを経て、P波時間断面図とそれから変換されたP波深度断面図を作成した。