4−2 今後の課題

○ 伊勢平野では、これまで、基盤までを対象とした反射法地震探査は、四日市市から菰野町にかけて(平成15年度)および鈴鹿市−河芸町−津市にかけて(平成16年度)の地域で実施されたのみであり、物理探査データの乏しい伊勢平野南部(津市、香良洲町、松阪市など)の三次元的な地下構造の精度向上が最重要である。一方、活構造に目を向けると、平成15年度反射法測線では、四日市断層の地下構造が明らかになったが、同断層の南方への延長はこれまでの情報からだけでは明確にされていない。平成16年度には、東京大学地震研究所および京都大学防災研究所によって鈴鹿川沿いに反射法・屈折法地震探査が実施されている。今後は、この調査結果を積極的に取り入れると共に、鈴鹿川から河芸町の間に新たに東西方向の反射法調査などを実施して、四日市断層の南方への延長および南部の断層系との関係を確認する必要がある。また、伊勢平野南部地域においても調査を重ねて行く必要がある。

○ 地下構造モデルの高精度化にあたっては、より高周波の地震動を評価するため表層地盤(Vsが400m/sより遅い層)の取り込みが必要になる。今年度の調査では、N値を用いた浅部構造のモデル化への試みが示されたが、今後も、この結果を活用し、浅部のS波に関する情報を収集・整理して、浅部構造の高精度化を行う必要がある。

○ 強震動データの収集・整理は引き続き必要であり、地震動シミュレーションによる検証を積み重ね、地震観測結果をモデルの修正にフィードバックさせることで、実質的なモデルの構築を図る必要がある。当地域は、内陸直下型地震だけでなく、海溝型の東海地震、東南海・南海地震による影響が想定されており、紀伊半島沖のプレート境界で発生している中規模地震に対しても検証を行う必要がある。そのためには、伊勢平野内だけでなく、その周辺地域(例えば、濃尾平野、岡崎平野、豊橋平野など)の調査結果も積極的に取り入れて広域の地下構造モデルを構築する必要がある。

○ 三重県内、特に伊勢平野においては、今後、東海地震、東南海・南海地震等による強震動の影響を受ける地域であると考えられる。これらの想定地震による強震動予測を行い、地域の地震防災対策に反映することは、地震防災対策を推進していく上で重要な作業であり、三重県においても被害想定調査の中で震度予測を行っている。今回の調査では、例えば、鈴鹿東縁断層帯によって盆地周辺山塊と切られる伊勢平野の盆地端部において、盆地端部効果が認められるなど、注意して評価すべき現象が得られている。今後も、強震動予測を行うための基礎資料を着実に蓄積していくとともに、得られた知見を地震防災対策に活用していくことが重要である。

○ 四日市コンビナートにおける巨大地震の強震動被害を考える上で、周期1秒から数秒程度のやや長周期地震動の特性は重要である。特に、今回の地下構造モデルから、四日市地域の深層地盤の固有周期が7秒程度であることから、この固有周期を持つ石油タンクのスロッシング被害が懸念される。このように、地下構造調査の成果である堆積平野における三次元速度構造モデルは、想定地震に対する強震動予測における基礎データとして活用されることが期待される。

以上