(2)N値とS波速度の関係

平成16年度伊勢平野地下構造調査の中で収集したPS検層10孔井(図3−1−3−1図3−1−3−2図3−1−3−3図3−1−3−4図3−1−3−5図3−1−3−6図3−1−3−7図3−1−3−8図3−1−3−9図3−1−3−10は、全孔井についてN値の記載がある。各柱状図の同一土質区分内の平均(換算)N値とS波速度の関係を図3−2−25に示す。各図は、砂礫質土(As:沖積層砂質土、Ag:沖積層礫質土、Ds:洪積層砂質土、Dg:洪積世礫質土、Ts:新第三紀層砂質土、Tg:新第三紀層礫質土)と粘性土(Ac:沖積粘性土、Dc:洪積層粘性土、Tc:新第三紀層粘性土)に分けて表示した。今回得られたデータは、四日市市内と鈴鹿市内に偏っており、砂礫質土において、多少のばらつきはあるものの、VsとN値の間には比較的良い相関が得られている。VsとN値の関係は以下の回帰式で近似することができる。

砂礫質土:Vs=87.936×N0.3267                   (3.2.1)

粘性土 :Vs=110.77×N0.3371                   (3.2.2)

図中には、今回得られたデータを用いた近似曲線のほかに、今井ほか(1975)、道路橋示方書、鈴鹿市(鈴鹿市庁舎、白子小学校、長太小学校のデータを用いた)による以下のN値とVsの関係式を示した。

○今井式:Vs=89.8N0.341                       (3.2.3)

 (今井ほか、1975)

○道路橋示方書

 砂質土:Vs=80×Ni(1/3)      (1≦Ni≦50)     (3.2.4)

粘性土:Vs=100×Ni(1/3)     (1≦Ni≦25)    (3.2.5)

 (社団法人日本道路協会、2002)

○鈴鹿市

 砂質土:Vs=78.34N0.363             (3.2.6)

 粘性土:Vs=111.03N0.349                      (3.2.7)

これらの結果と比較すると、砂質土、粘性土ともに、既存の回帰式とほぼ整合しており、回帰式(3.2.1)および(3.2.2)が概ね妥当であると考えられる。今回得られたデータからは、サンプル数が少ないため、Imai & Tonouchi(1982)などによる地質年代を併用した回帰式の細分化は行っていない。図3−2−26には、濃尾平野(ほとんどが名古屋市内のサンプル)との比較を示した。伊勢平野におけるN値とS波速度の近似式は、濃尾平野の結果とも概ね整合している。図3−2−27には、鈴鹿市の式および今回得られたデータから推定した回帰式を用いてN値(平均)から推定したS波速度と、PS検層によって得られたS波速度との関係を示した。換算式の違いによる差は顕著ではない。以上の結果から、N値(平均)からのS波速度の推定は(3.2.1)式および(3.2.2)式を用いることとする。一方、P波速度に関してはN値との相関は良くないが、地質年代による相関があり、各年代でP波の代表値(平均値)を用いれば十分である(図3−2−28)。