3−2−5 重力と基盤深度の関係

重力異常は広域の基盤構造の大略を知るのに用いられることが多い。平成14年度の調査では、重力値としてブーゲー異常値に波長5kmから130kmのバンドパスフィルターを施し、ブーゲー異常値に含まれるプレートやモホ面・コンラッド面の影響を取り除いた残差重力値を用いて、既存の反射法探査および微動アレイ探査毎に基盤深度と残差重力の関係(g−h関係式)を抽出し、g−h関係式の傾き(A)と切片(B)を1km間隔で補間および外挿を行い、「傾き(A)×残差重力値+切片(B)」の計算を行って地震基盤深度を推定し、さらに、2次元の重力モデリングを行って基盤深度を修正している。ただし、断層などの構造が急変する部分では、重力異常値に誤差が含まれることなどにより、残差重力と基盤深度の相関が悪いため解析には用いていない。また、伊勢平野内においては、反射法探査による基盤深度が得られていないため、g−h関係式は、点在する微動アレイ探査の結果から推定されている。図3−2−22−1および図3−2−22−2には、それぞれ解析に用いたブーゲー異常値(地質調査所(2000)および名古屋大学(2001)による。仮定密度2.67g/cc)および残差重力値を示した。本調査において新たに反射法探査による結果が加わったため、残差重力値と基盤深度の関係を再確認することにした。図3−2−22−3には反射法測線に沿ったブーゲー異常値、残差重力値および基盤上面深度をそれぞれ示した。入力したブーゲー異常値と残差重力値の形状は測線内では大きく異なっていないため、フィルターによる悪影響はないと考えられる。

図3−2−22−1には、伊勢平野内における反射法記録、微動アレイ解析結果から推定された基盤深度および基盤到達井における基盤深度と残差重力との関係を示した。この図からは、養老断層近傍部分および鈴鹿東縁断層帯近傍部分のデータは省いた。

この図から、ブーゲー異常と基盤深度はほぼ線形関係にあると考えられる。図中には、反射法探査および微動アレイ探査結果から得られたデータを用いて推定した基盤深度と残差重力の関係

基盤深度(m)=−46.5*残差異常(mgal)+643.89       (3.2.3)

を示した。図中において、本年度実施した反射法探査による結果だけを見ると、上記の近似式からややずれているように見えるが、これは、基盤深度の差が鈴鹿東縁断層帯を除けば最大500m程度であり、伊勢平野内の広域に配置された微動アレイ間の基盤深度の差に比べると測線内での基盤深度の変化量が小さいためであると考えられる。以上のように、(3.2.3)式に示した近似式は微動アレイ探査データによる寄与が大きく、また、本調査のの反射法探査による結果は上記の関係式にのっており、三重県(2003)において作成した基盤深度図と本調査の反射法探査による結果は概ね一致していることから、本調査の結果を用いて新たに基盤深度図を作成する作業は行っていない。伊勢平野では、基盤までを対象とした反射法探査による成果は非常に少ないため、今後も調査を積み重ねて、伊勢平野内での基盤深度を明らかにし、重力と基盤深度の関係を蓄積していく必要がある。参考として、図3−2−23−2に、濃尾平野における基盤深度と残差重力の関係を併せて示した。濃尾平野全体のデータを用いた場合でも、今回得られた関係式と同じような関係式が得られた。