(2)堆積層の構造など

・基盤以浅の堆積層の構造は測線東側からCDP350付近まで緩やかに西に向かって落ちているが、CDP350〜450にかけて大きく変化している。この変化は、四日市撓曲に対応していると考えられる。

・四日市撓曲以西の堆積層は、緩やかに西に向かって落ちている傾向にあり、鈴鹿東縁断層帯近傍で途絶えている。

・速度解析の結果、基盤以浅の堆積層のP波速度は深度と共に漸増し、1.6km/sec〜3.6km/secを示しているが、A層の速度は測線の西側でやや速くなる傾向がある。

・反射法速度解析で用いた層区分に従えば堆積層の特徴は以下の様にまとめることが出来る。 表3−2−1−1

*調査は深部構造の把握を主目的としているため、極浅層部については十分なデータ取得がなされていない。

 

本測線上には、基盤まで到達している坑井は無い。測線の近傍では、温泉ボーリングおよび微動アレイ解析結果によって以下の基盤上面深度に関する情報が得られている。  表3−2−1−2

*微動アレイによる基盤深度は速度固定解析の結果を表示した。

図3−2−2は、P波反射法深度断面に各坑井で得られた柱状図および微動アレイ解析結果を対比させた結果である。坑井柱状図は、地質層序区分により色分けしてあり、見当山類層以降、東海層群相当層、中新統相当層、基盤岩をそれぞれ、青、黄、緑、赤色で示した。 表3−2−1−3

図3−2−3は、P波反射法深度断面に各坑井で得られた柱状図を対比させた結果である。これによると、この地域では、第四紀の堆積層は薄く、東海層群(泊累層)上面は、A層の中間に位置する。測線近傍では、東海層群相当層の露頭が得られており、東海層群が広く堆積していると予想される。菰野温泉の柱状図を用いても、深度1300m以深の層序に関する情報が無いが、中新統上面は、少なくともD層上面よりは深いことになる。本調査で得られた深度断面を三重県(1996) による鈴鹿東縁断層に関する調査および水資源開発公団ほか(1995)による伊勢湾内の調査による反射法深度断面と比較した結果をそれぞれ図3−2−4および図3−2−5に示した(伊勢湾のデータは、本測線の延長にあたるC−2測線のみを示した)。三重県(1996)によれば、P波速度1.9〜3.0km/secを第四紀層から第三紀層上部(東海層群)、3.4km/secを第三期層下部(中新世千種層に対比される可能性が高い)、5.0km/secが基盤(中・古生界)としている。水資源開発公団ほか(1995)による解釈結果によれば、C−2測線の西端では基盤岩上面から500m程度浅いところの強い反射面を中新統上面としている。基盤上面および中新統上面の反射面の関係は、本測線西端でのF層上面およびE層上面のパターンとよく似ている。また、平成14年度の微動アレイ解析の結果では、中新統と東海層群の境界が検出されていないが、中新統上面はS波速度1.4km/sec層中に存在する可能性が大きいとしている(三重県、2003)。以上の結果から、中新統上面は、E層上面付近にあたる可能性が大きい。

以上の解釈結果をまとめると、図3−2−6に示すように、

A層:沖積層〜東海層群上部相当層

B層:東海層群相当層

C層:東海層群相当層

D層:東海層群相当層

E層:中新統相当層

と推定される。

伊勢平野周辺にはこれまでに、先新第三系の基盤までを対象とした反射法地震探査が行われている。以下に本調査で得られた結果や既存調査結果を踏まえた検討結果についてまとめる。

図3−2−7には平成6年に実施された長良川河口部地質構造調査(水資源開発ほか、1995)のうちの陸域で行われた東西方向のA測線と本調査で得られた反射法断面図をそれぞれ示した。桑名断層を横切っている長良川河口部地質構造調査(図3−2−7(b))の結果から、基盤上面深度は、少なくとも桑名市北部では、桑名断層によって1000m程度変化している。基盤の上に堆積している堆積層のつながりは不明瞭であるが、断層帯を挟んで食い違いが認められるようにも見られる。一方、本調査で得られた反射法の結果から(図3−2−7(a))、四日市撓曲付近では、基盤の変位量は300m程度あり、浅部の堆積層は連続している(切れていない)ことがわかる。

・ 員弁郡北勢町(現いなべ市北勢町)付近で鈴鹿東縁断層帯を対象に実施された反射法の結果(図3−2−4(b))からは3本の断層が認められ、それによって堆積層の構造が大きく変化している様子が捉えられているが、本調査の結果からは、鈴鹿東縁断層帯より西側には断層帯は認められず、基盤が直接露出している。このように、鈴鹿東縁断層帯の北と南では断層構造が大きく異なっていることがわかる。

・ 本調査測線の東側に着目して、測線の東端から3km程度離れている伊勢湾内の反射法の結果と本調査の結果を比較すると、基盤上面深度および中新統上面深度共に400m程度ずれており、両測線の間に構造変化が存在する可能性がある(図3−2−5)。

図3−2−8には、平成11年度および平成13年度に実施した濃尾平野地下構造調査(愛知県、1999および愛知県、2001)との比較を示した。図3−2−9には平成9年度に実施された布引山地東縁断層帯に関する調査(三重県、1998)の結果を図3−2−10には、平成13年度に実施された布引山地東縁断層帯に関する調査(三重県、2001)の結果をそれぞれ示した。