1−7 調査結果の概要

これまでの調査結果から基盤深度が最も深いと予想される伊勢平野の北部を東西に横断する約21kmの測線上(四日市市から三重郡菰野町に至る区間)で、バイブレータ震源によるP波反射法地震探査および測線上の4箇所を発振点としてバイブレータ震源による屈折法地震探査を実施した。

また、四日市市下海老町に1000mの測線を設け、ミニバイブ(S波)を震源とし、三成分受振器を用いた局所的なS波反射法地震探査のテストを実施した。これらによって得られたデータと既存データを用いて総合解析を行った。

調査測線の位置は図1−2−1に示した。

これらの解析を行った結果、以下のことが明らかとなった。

<P波反射法地震探査>

・バイブレータを震源とする反射法地震探査により、CDP1(四日市市)からCDP1400(菰野町千草)付近まで基盤上面に対応すると考えられる反射面が捉えられた。その深度は、大小の凹凸を伴い、全体的には緩やかに西上がりである。基盤は、CDP1380付近で地表に露出している。これは鈴鹿東縁断層に対応しており、鈴鹿東縁断層の落差は1700m程度におよぶ。

・鈴鹿東縁断層より東側では、基盤深度は1500m〜2000m程度であり、CDP400(四日市市東坂部町)付近で急激に変化しており、また、CDP750(赤水町)付近に基盤の高まりが認められる。

・基盤以浅の堆積層の構造は測線東端からCDP350付近まで緩やかに西に向かって落ちているが、CDP350〜450にかけて大きく変化している。この変化は、四日市撓曲に対応していると考えられる。

・四日市撓曲以西の堆積層は、緩やかに西に向かって落ちている傾向にあり、鈴鹿東縁断層帯近傍で途絶えている。

・速度解析の結果、基盤以浅の堆積層のP波速度は深度と共に漸増し、1.6km/sec〜3.6km/secである。

<P波屈折法地震探査>

・バイブレータ4台を震源とする夜間の屈折法発振により、基盤の屈折波が確認された。屈折波の最大到達距離は約21kmである。

・レイトレーシング(波線追跡法)で求まった堆積層中の各層の速度は、反射法による速度と大略一致している。

・屈折法の解析から求まった基盤岩のP波速度は5.5km/secである。

<S波反射法地震探査>

・P波、S波ともに深度約1600mの基盤までの反射面が捉えられた。

・S波深度記録とP波深度記録との反射波の対応は比較的良い。

・S波の基盤付近の速度解析の精度はやや落ちるものの、P波記録の反射面との比較により、速度を絞り込むことが可能である。堆積層中のS波速度は0.4km/sec〜1.5km/sec、P波速度は1.5km/sec〜3.5km/sec を示す。

<総合解析>

・伊勢平野内の反射法結果およびPS検層の結果から、堆積層中のP波速度とS波速度の関係を導いた(ただし、Vs≧400m/sec)。この関係を用いて、本年度の反射法測線上において、P波速度構造から広域の堆積層のS波速度構造を推定した。

・伊勢平野内では、残差重力と基盤深度は比較的よい相関が見出せる。