(3)S波速度構造解析

本調査の目的は、伊勢平野の三次元速度構造モデルを構築することにある。ただし、現在までに蓄積されている深部地盤構造に関する情報は、極めて少ない。そこで、深部地盤に関する詳細な調査が実施されている濃尾平野の速度構造、地質構造も参考にしながら、モデル構築を行うことが合理的と考える。そのような背景から、濃尾平野の地下構造との接続箇所において観測を行い、位相速度及び求められた速度構造の比較を行った(既存の反射法地震探査結果や既存の微動アレー探査結果との整合性の確認)。比較を行った地点は、濃尾平野地下構造調査における微動アレー探査NP1地点(文献No.8)と本調査のNo.3地点である。

図3−2−20には位相速度逆解析のフローを示す。遺伝的アルゴリズム(GA)による解の探索範囲は、文献No.8を参考に表3−2−8のように設定した。

図3−2−21に、濃尾平野地下構造調査における微動アレー探査NP1地点と本調査No.3地点の解析結果(同一地点で測定)の比較図を示した。上図の桃色の丸(○)が、今回観測を行った観測位相速度、下図の桃色の線(−)が逆解析により求めたS波速度構造である。観測位相速度は、概ねよく対応していることがわかる。求められたS波速度構造に関しては、今回の観測結果の方が基盤深度について100m程深く推定されているが、両者はよく対応している。

この比較により解析法の妥当性が確認できたので、他の14地点においても同様の解析を行った。ただし、観測点毎に求められている最低位相速度が大きく異なるため、表層部部分のS波速度の探索範囲を微調整した。

表3−2−9にGAによる解の探索範囲を示す。No.6,8,14については、表3−2−8の探索範囲を適用した。図3−2−22−1図3−2−22−2に逆解析結果を示す。No.15が最も基盤深度が浅く深度約360mであり、最も深い地点はNo.3の約1,830mである。基盤のS波速度に関しては、3.0km/sから3.8km/sの範囲で求まっている。

図3−2−17−1 観測波形およびパワースペクトル図(No.1〜No.8 LLアレー)

図3−2−17−2 観測波形およびパワースペクトル図(No.9〜No.15 LLアレー)

図3−2−17−3 観測波形およびパワースペクトル図(No.1〜No.8 Lアレー)

図3−2−17−4 観測波形およびパワースペクトル図(No.9〜No.15 Lアレー)

図3−2−17−5 観測波形およびパワースペクトル図(No.1〜No.8 Mアレー)

図3−2−17−6 観測波形およびパワースペクトル図(No.9〜No.15 Mアレー)

図3−2−17−7 観測波形およびパワースペクトル図(No.1〜No.8 Sアレー)

図3−2−17−8 観測波形およびパワースペクトル図(No.9〜No.15 Sアレー)

図3−2−18−1 空間自己相関関数および位相速度分散曲線(No.1〜No.4)

図3−2−18−2空間自己相関関数および位相速度分散曲線(No.5〜No.8)

図3−2−18−3空間自己相関関数および位相速度分散曲線(No.9〜No.12)

図3−2−18−4空間自己相関関数および位相速度分散曲線(No.13〜No.15)

図3−2−19 全観測点における位相速度分散曲線

図3−2−20 位相速度逆解析の流れ

表3−2−8 遺伝的アルゴリズムによる解の探索範囲(観測点No.6,8,14地点)

表3−2−9 遺伝的アルゴリズムによる解の探索範囲(観測点No.6,8,14以外の地点)