(1)位相速度の推定

微動アレー観測による表面波の位相速度の推定法としては、「周波数―波数スペクトル法(F−K法)」と「空間自己相関法(SPAC法)」があげられるが、一般にSPAC法の方がより深い構造を探査することができるといわれている(宮腰ほか,1996)。したがって、本調査では、SPAC法および拡張SPAC法(岡田,1994)を採用した。図3−2−11に解析の流れを示す。本調査において、位相速度算出に用いた解析パラメーターを表3−2−7に示す。

表3−2−7 解析パラメーター一覧表

図3−2−11 位相速度推定の流れ

アレー毎の位相速度の算出は、以下のように行う。

式3−2−5−1

図3−2−12に4点アレーの場合の空間自己相関関数の例を示す。SPAC法においては、上式においてrを固定し位相速度を求めたが、この方法を拡張し、ωを固定し、空間自己相関関数をrの関数としてベッセル関数の調整を行う方法を導入する。この方法を拡張SPAC法という。

拡張SPAC法により、様々なr(観測点間の距離)の記録も統合して解析することができる。つまり、日時を変えてアレーの大きさを変えて観測した記録も統合して解析することができる。図3−2−13には、アレー半径が57.7 mと115.47 mを組み合わせた空間自己相関関数例と周波数1.72 Hzにおける空間自己相関関数とベッセル関数を示す。図に示すように観測された空間自己相関関数にベッセル関数を最も合致するように位相速度を周波数毎に求める。

アレー毎に求められた位相速度を統合して、全体としての整合性を調べ、拡張SPAC法によって、最終的な周波数に対する位相速度分布(分散曲線)を求める。図3−2−14に解析結果例を示す。

図3−2−12 4点アレーの配置と空間自己相関関数

図3−2−13 空間自己相関関数例

図3−2−14 位相速度解析結果例