3−2−1 微動アレー探査の概要

地表は、人が感じることができないほどに微小ながら常に振動しており、常時微動と呼ばれている。この常時微動の振動源は、人間活動によるもの(交通振動や工事振動、工場振動等)、及び自然現象によるもの(海岸線に押し寄せる波浪や風等)がある。常時微動は、これら地表上の様々な動きが振動源となって引き起こされた表面波(レイリー波と呼ばれる表面波)であり、振動源は地表面にほぼ一様に分布していると考えられ、一般に特定の伝播方向を持たないのが特徴である。

表面波の特徴は図3−2−1に示すように、その波動エネルギーが地表面に集中し、地表から深くなるにつれて、その振幅が著しく減少することである。また、波動エネルギーの集中する領域の地表からの深さは表面波の波長に依存し、左右の図の場合では、左図のように周期(波長)が長い方がエネルギーの集中する領域はより深い。また、表面波の位相速度(表面波の伝播する速度のうちの一つで波長あるいは周期の関数)は、エネルギーが集中する地表付近の領域における地盤の弾性波速度および密度により決定される。

したがって、地盤の弾性波速度及び密度が深さによって異なる場合、表面波の位相速度は、その波長すなわち周期の関数となり分散性(伝播速度が周波数に依存して変化する)を示し、弾性波速度と密度が深さによらず一定であれば分散性は示さない。

図3−2−1 表面波(レイリー波)の特徴

微動アレー探査は、以上の性質を利用して、常時微動を観測し、位相速度を周期の関数として解析し、その分散曲線の特徴から地盤の速度構造(特にS波速度)を求める探査手法である。