5−5−4 計算結果の比較

@2000年5月21日の地震

地震観測点の各成分に関する計算と観測の波形比較例を,図5−28に示す。なお,振幅はそれぞれの波形に対し0.1〜1Hzのバンドパスフィルターをかけ,時間軸に関しては,S波主要動のEW成分を合わせる形で調整した。この結果,以下のようなことがわかった。

計算波形は観測波形に比較的よく一致するが,計算による振幅は,全体的に盆地の東側で観測値に対してやや小さく,西側でやや大きい傾向が見られた。したがって,使用した震源メカニズムと実際のものはやや異なっているものと考えられる。

表5−3 2000年5月21日の地震の震源パラメーター

A2001年8月25日の地震

図5−29に,地震観測点における観測波形と計算波形の比較例を示す。なお,振幅はそれぞれの波形に対し0.1〜1Hzのバンドパスフィルターをかけ,時間軸に関しては,S波主要動のNS成分を合わせる形で調整した。この結果,京都市消防局などの一部の観測点では,後続S波の振幅の精度はやや悪いものの,堆積層が深くなる伏見消防署など,S波の振幅後続波群の振幅とも比較的よく再現されており,作成された3次元モデルはおおむね妥当なものと考えられる。

表5−4 2001年8月25日の地震の震源パラメーター

兵庫県南部地震後に行われた研究で,地下構造により振幅の大きい地域が見られることが明らかにされた。京都市においても京都盆地東縁では花折・桃山断層が,また山科盆地西縁では花山・勧修寺断層など逆断層が存在することから,これらの断層構造によって振幅の大きくなる地域の存在が考えられる。図5−30に,2001年8月25日の地震を用いた解析のスナップショットを示す。これによると入射した地震波は京都盆地の東縁付近で大きい振幅の傾向を示す。図5−29に示す観測記録からも,東山消防署・京都市消防局・京都大学などの盆地東部における観測点の振幅もこの傾向と一致する。また,山科盆地内でも西側において振幅の大きい部分が見られる。しかし,山科消防署の観測記録ではスナップショットで見られるような10秒以降の大きい振幅が見られない。このような大きい振幅の波は盆地構造により2次的に生成された波と考えられるが,この観測点は山科盆地の北側に位置していることから,このような波群が観測されなかったものと考えられる。

以上,観測結果とシミュレーションとの対比を行ったが,修正したモデルにおけるシミュレーション結果は比較的よく観測波形を説明していることから,修正モデルは精度良く決定できたと考えられる。