2−4 ボーリング地点の地質層序

ボーリングコア観察,ならびに各種分析の結果によって明らかとなったボーリング地点[KD−0]の地質層序について以下にまとめる。図2−6は,コア観察ならびに試料分析結果を踏まえて作成した総合柱状図である。

基盤岩の上位に堆積する大阪層群の地質層序(表2−10参照)を特定するおもな鍵層は,火山灰と海成粘土層である。KD−0孔においては,肉眼観察による色調判定と含有化石の確認より,5枚の海成粘土層あるいはその相当層が推定された。これらのうち,最上位の粘土層(深度101.82〜106.00m)は,珪藻化石分析より海成の証拠は出なかったが,花粉分析結果より温暖期における堆積を指示するとともに,コナラ属アカガシ亜属が優占的に出現することより,Ma 9相当層準に対比される可能性が高い。

火山灰分析の結果,5枚の広域火山灰と3枚の降灰層準が対比できた。このうち,珪藻化石分析より海成であると推定される深度183.56〜186.45mの粘土の上位に,サクラ火山灰(深度164.88〜164.92m)が確認された。サクラ火山灰はMa6とMa7の間にはさまれることから,この海成粘土層はMa6層に相当すると考えられる。また,深度297.84〜302.45mの粘土も海成であることが珪藻分析より明らかになった。この粘土の直上に,Ma3にはさまれて分布するアズキ火山灰(深度295.30〜297.84m)が確認されたことより,これはMa3に相当する。

平成11年度に掘削されたKD−1孔においては,誓願寺―栂火山灰,八丁池T火山灰,アズキ火山灰の3枚が検出され,Ma3,Ma4,Ma5,Ma6の海成粘土層あるいはその相当層準が対比されている。コアの色調より海成粘土と推定された粘土の内,Ma6の下位の深度213.19〜217.87mの粘土は珪藻化石分析より海成と判断されたが,その下位の深度249.05〜250.69mの粘土は珪藻化石分析より海成の証拠はみつからなかった。しかし,KD−0とKD−1孔の2地点間におけるMa9,Ma6,Ma3の3層準の層位関係より,KD−0孔におけるMa3とMa6の間にある2枚の暗灰色を呈する粘土層は,海成粘土のMa5層とMa4相当層準に対比できると考えられる。

また,基盤岩直上の深度667.80〜670.79mに,第三紀と第四紀の境界付近にはさまれる福田火山灰が確認された。

以上より,KD−0地点における鍵層はつぎのようにまとめられる。

深度 13.00〜 13.10m:鬼界アカホヤ火山灰降灰層準

深度 24.75〜 24.80m:阿蘇4・鬼界葛原火山灰降灰層準?

深度101.82〜106.00m:Ma 9相当層

深度164.88〜164.92m:サクラ火山灰

深度183.56〜186.45m:Ma 6

深度213.19〜217.87m:Ma 5

深度249.05〜250.69m:Ma 4相当層

深度295.30〜297.84m:アズキ火山灰

深度297.84〜302.45m:Ma 3

深度343.60m    :光明池TあるいはイエローU火山灰

深度667.80〜670.79m:福田火山灰(第三紀/第四紀の境界)

海成粘土は一般に暗灰色を呈するが,本孔において確認できた海成粘土層は,比較的明るい色調の灰〜暗灰を示し,珪藻化石分析でも海性種が検出できなかったものもあった。本ボーリング孔付近は,KD−1,KD−2孔付近が海域であった時期に陸域であったわけではなく,海域であったが木津川など河川の流入によって淡水に近い海域であったと推測される。

次に,大阪層群の上位の段丘堆積層は,前述したようにその基底は明確でないが,砂礫層の色調の変化から,深度73m付近が段丘堆積層の基底付近に相当する可能性がある。さらに,その上位の沖積層の基底は,火山灰分析より深度13mに約7300年前に噴出した鬼界アカホヤ火山灰降灰層準が確認され,また深度14m以浅において姶良丹沢火山灰(約23,000年前に降灰)の特徴を持つ火山ガラスが含まれることから,深度13m付近に相当する可能性が考えられる。

表2−10 大阪層群の総合層序表[市原 実編著(1993):大阪層群より]