(3)珪藻化石分析

珪藻化石灰分析を行った試料は全部で67試料である。分析結果は以下のとおりであり,詳細は表2−8に示す。

D−1, 2:深度34.80〜36.20m

淡水性珪藻が少量産出し,構成種は浮遊生種であるMelosira属が主体で,下部で底生種であるGomphonema属やCymbella属が見られる。この産出頻度は,上位にいくほど減少する。したがって,流動性のある淡水域にあったものと推測される。

D−3:深度38.22〜39.08m

淡水性珪藻が少量産出し,構成種は浮遊生種であるMelosira属やStephanodiscus属が主体で,底生種であるGomphonema属も見られる。したがって上位層と同様に,流動性のある淡水域にあったものと推測される。

D−4:深度43.83〜44.70m

珪藻化石は全く産出しなかったため,堆積環境は不明であるが,少なくとも非海成の環境にあったものと考えられる。

D−5, 6:深度49.40〜51.00m

淡水性珪藻が産出し,構成種は浮遊生種であるMelosira属が主体で,底生種であるEpithemia属やCymbella属も見られる。この産出頻度は,上位にいくほど減少する。したがって,流動性のある淡水域にあったものと推測される。

D−7:深度78.26〜78.73m

淡水性珪藻が多産し,構成種は浮遊生種であるMelosira属やStephanodiscus属を主体とする。したがって,湖沼など止水性の淡水域にあったものと推測される。

D−8, 9, 10:深度102.00〜105.40m

淡水性珪藻が多産し,構成種は浮遊生種であるMelosira属が主体で,底生種であるEpithemia属やGomphonema属も見られる。したがって,湖沼など止水性の淡水域にあったものと推測される。

D−11:深度128.00〜129.30m

淡水性珪藻が少量産出し,構成種は浮遊生種であるMelosira属が主体で,底生種であるEpithemia属も見られる。したがって,湖沼など止水性の淡水域にあったものと推測される。

D−12, 13:深度134.10〜135.95m

淡水性珪藻が産出し,構成種は浮遊生種であるMelosira属を主体とする。この産出頻度は,上位にいくほど減少する。したがって,流動性のある淡水域にあったものと推測される。

D−14:深度137.30〜137.86m

淡水性珪藻が多産し,構成種は浮遊生種であるMelosira属が主体で,底生種であるGomphonema属やCymbella属も見られる。したがって,湖沼など止水性の淡水域にあったものと推測される。

D−15:深度155.19〜156.00m

淡水性珪藻が少量産出し,構成種は浮遊生種であるMelosira属を主体とする。産出頻度が小さいことから,流動性のある淡水域にあったものと推測される。

D−16:深度178.00〜179.35m

淡水性珪藻が多産し,構成種は浮遊生種であるMelosira属やStephanodiscus属を主体とする。したがって,湖沼など止水性の淡水域にあったものと推測される。

D−17, 18, 19:深度183.56〜186.45m

淡水性珪藻が少量産出し,最下部の試料番号D−19で極わずかに海水性珪藻を伴った。構成種は,淡水性珪藻が浮遊生種であるMelosira属やStephanodiscus属を,海水性珪藻は底生種であるDipoloneis smithiiを主体とする。したがって,海水の影響を受ける,海水域に近い淡水域にあったものと推測される。

D−20, 21, 22, 23:深度213.20〜217.00m

淡水性珪藻が少量産出し,試料番号D−21で極わずかに海水性珪藻を伴った。構成種は,淡水性珪藻が浮遊生種であるMelosira属やStephanodiscus属を,海水性珪藻は底生種であるDipoloneis smithiiを主体とする。したがって,海水の影響を受ける,海水域に近い淡水域にあったものと推測される。

D−24〜31:深度249.05〜283.61m

珪藻化石は全く産出しなかったため,堆積環境は不明であるが,少なくとも非海成の環境にあったものと考えられる。

D−32:深度291.74〜292.51m

淡水性珪藻が多産し,構成種は浮遊生種であるMelosira属が主体で,底生種であるFragilaria属やGomphonema属,Epithiemia属も見られる。したがって,湖沼など止水性の淡水域にあったものと推測される。

D−33, 34, 35, 36:深度297.84〜302.20m

試料番号D−35で少量海水性珪藻が,D−33では極少量ながら海水性と淡水性珪藻が同程度産出した。構成種は,海水性珪藻が底生種であるDiploneis smithiiやMelosira sulcateを,淡水性珪藻は浮遊生種であるMelosira属を主体とする。したがって,海退期の環境にあったものと考えられる。本層の直上にアズキ火山灰層が確認されていることより,本層は大阪層群の海成粘土Ma3層に相当する。

D−37〜67:深度312.92〜498.00m

珪藻化石は全く産出しなかったため,堆積環境は不明であるが,少なくとも非海成の環境にあったものと考えられる。