(2)2001年8月25日の地震

この地震の震源情報は以下の通りである。

震央位置 北緯35度9分7秒,東経135度40分5秒(京都市京北町)

震源深さ  6.93km

マグニチュード 5.3

震源モデル 走向206度,傾斜47度,滑り角121度

入力には(10)式で示される関数を滑り関数とし,中心周期を1secとした。図4−11に各観測点における観測波形と計算波形の比較結果を示す。図中の黒線は観測波形,赤線が修正モデルにおける計算結果である。なお,振幅はそれぞれに波形に対し0.1〜1Hzのバンドパスフィルターをかけたのち,北消防署観測点の最大振幅値で規準化している。また,時間軸に関しては,S波主要動のNS成分を合わせる形で調整した。この結果,以下のことが見られる。

各地点とも計算波形は,EW成分における位相が一部観測点で一致しないが,多くの観測地点においてはEW,UD成分の位相とも比較的よく一致する。

S波初動付近における相対振幅はよく一致している。

後続波についても,伏見消防署の10〜15秒の波群や樫原観測点における波の傾向などが一致する。

兵庫県南部地震により,地下構造により振幅の大きい地域が見られることが解った。京都市においても京都盆地東縁では花折・桃山断層が,また山科盆地西縁では花山・勧修寺断層など逆断層が存在することから,断層構造によって振幅の大きくなる地域の存在が考えられる。図4−12にシミュレーションによるスナップショットを示す。これによると入射した地震波は京都盆地の東縁付近で大きい振幅の傾向を示す。図4−11のように観測記録でも東山消防署・京都市消防局・京都大学などの京都盆地東部における観測点の振幅もこの傾向と一致する。なお,山科盆地内でも西側においても振幅の大きい部分が見られるが,図4−11で示したように山科消防署あるいはK−NET京都12ではスナップショットで見られるような10秒以降の大きい振幅が見られない。このような大きい振幅の波は盆地により2次的に生成された波と考えられるが,これらの観測点は山科盆地の北側に位置していることから,このような波群が観測されなかったものと考えられる。

以上,観測結果とシミュレーションとの対比を行ったが,1次モデルに対し修正モデルが観測記録によく一致すること,また,修正モデルにおけるシミュレーション結果は比較的よく観測波形を説明していることから,修正モデルは1次モデルよりも精度の向上が見られたと考えられる。